エビ、カニ、ヤドカリやサンショウウオ、イモリ、カエル等のうんちくWiki「Decapedia」の中の人が身近な生き物について抜粋して紹介する特集コーナー。第一回目は潮干狩りでよく見られるカニ「マメコブシガニ (Philyra pisum)」です。
コブシガニ科のカニは原始的な形態を残したカニで、アサヒガニほどの知名度はありませんが、横ではなく前に歩くことができます。
マメコブシガニの日本での自然分布は岩手県以南~奄美大島までと言われています。内湾の砂泥底、砂礫底の干潟に棲む甲幅2cm程の小さなカニですが、日本では干潟がどんどん無くなっていったために一時は絶滅が危惧されるほど数を減らしていたそうですが、最近では潮干狩りのためのアサリの放流に混ざって分布域を広げています。本来の自然分布ではないので、なんとも複雑な心境です。
マメコブシガニは鉗脚(かんきゃく=はさみあし)で砂の中を探りながら少しづつ前へ進み、小さな二枚貝(アサリやイガイ等の稚貝等)や砂の中に潜む小さな環形動物(ゴカイの仲間)を捕食しています。生きたものだけではなく死んだ貝の肉も漁る干潟のスカベンジャー的存在で、動きも異常に鈍く、素早く泥の中に潜る様な器用さもないため、外敵が近づくと潮溜まりの中でジッとしてやりすごすか、追いつめられると死んだふりで誤魔化そうとするぐらい。よくこれで太古から生き残ってこれたものだと思います。
繁殖期は6~8月。5月ぐらいから干潟ではオスがメスを後ろから抱え込んで、一緒に前へ歩く姿がよく見られますが、これは交尾前ガードといわれるもので、メスが交尾可能になるまで、他のオスに横取りされない様に守っています。
干潟のカニは飼育が難しい種類が多いのですが、マメコブシガニは体も小さく、泥に巣穴を掘るタイプではないので、海水魚が長期飼育可能なマリンアクアリウムであれば飼育は容易。ライブロックのレイアウトを崩す様なパワーもなく、魚を襲って食べる様なこともないので、おとなしい魚となら混泳も可能。磯のヤドカリとの同時飼育も全く問題はありません。
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マメコブシガニといえば、ファミリーで潮干狩り等へ行った際、子供の格好の遊び相手になるので、「家に持って帰りたい」と言い出すことも多いと思います。こうした場合、特に大掛かりな飼育設備を使用しなくても、とりあえずならプラケースで飼育することが可能です。
プラケースに2センチぐらい底砂を敷きます。細かい砂の方が良いのですが管理が大変なので、ゴマ粒大ぐらいで大丈夫。大磯砂でも熱帯魚用のセラミックサンドでも川砂でも海砂でもサンゴ砂でも何でも大丈夫です。陸地には上がらないので、石などを置く必要はありません。
市販の人工海水をカルキを抜いた水に溶き、比重計の目盛が1.020以上1.023以下であることを確認してから入れます。ケースの高さにもよりますがが15~20センチぐらいまで入れた方がよいでしょう。
人工海水は海水魚を扱っているペットショップで購入できます。最近ではAmazonにも複数あるので、入手は容易です。比重計も同様です。
※食塩(粗塩や、天然塩や自然塩と商品名にうたっているものも含む)を水に溶いても海水とは全くの別物なのでNGです。代用もできません。
エアポンプで海水中に空気を送ってやります。ホースの先はエアストーンでも良いのですが、水作等の投げ込み式のフィルターに繋ぐのも有効です。エアポンプや水作もペットショップやAmazonで入手可能。
※海水にエアポンプを使うと塩ダレが生じるので、電化製品やコンセントタップの近くに置くのは止めましょう。また、エアポンプのコンセントタップは飼育ケースよりも高い場所に置き、コンセントタップに直接水が垂れない様にします。
餌は1~2日置き。夏場や冬場は1週間に1回程度。茹でて冷凍しておいたアサリ等を少量刻んで与えましょう。食べ残したものはすぐに取り除いてください。
水は季節によりますが、一週間置きに1/3ずつ換えましょう。
この方法で子供たちが飽きてしまうまで(1~2ヶ月程度ぐらい)なら飼育することができます。
長期飼育したいという方は、マリンタンクを立ち上げましょう。通常、マリンタンクの立ち上げには水槽のセッティングから空回しで1ヵ月程度は掛かりますで、この方法でキープしながら準備するとよいでしょう。