テレビゲームという娯楽を知るまでの筆者の趣味は絵本を読む、アニメ、クイズ番組を見るかのインドア系だった。特にクイズ番組は当時やっていたものの大半を見ていて、その中でも午前10時頃に放送されていた『100万円クイズハンター』は今なお、強い印象を残している。風邪で学校を休んでいた時にも見れたのも大きい。
また、「ハンターチャンス」、「ゴールデンハンマー」と言った独特な決め文句、用語の数々も幼い筆者の琴線を刺激し、後者はファミコンの『レッキングクルー』にも特別なアイテムとして登場したのもあって、ことさら、脳裏に刻み込まれている。時系列的に初出は『レッキングクルー』らしいが。
『100万円クイズハンター』であれば特別な解答権が得られ、『レッキングクルー』なら強力なひと振りが可能になる。だけども、それが隠されているのは複数あるパネル(壁)の中のひとつ。
思えば、昨今のゲーム界隈も家庭用に限らず、色んな種類に溢れ、特別な一本が隠れやすい状況になっている。
そんな「ゴールデンハンマー」なゲームを見つけ、ひと振り紹介するのを目的としたのがこちらの連載だ。第一回となる今回紹介する一本は、2018年4月26日に任天堂から発売されたニンテンドー3DS用ソフト『ザ・デッドヒートブレイカーズ』だ。
■いまから始める『ザ・デッドヒートブレイカーズ』(3DS) / 序盤を楽しむためのプチ攻略
本作は2012年2月22日に、ニンテンドー3DS用ダウンロードソフトとして配信された『ザ・ローリング・ウエスタン』の系譜に連なる作品。シリーズとしては2013年4月10日に配信された『ザ・ローリング・ウエスタン 最後の用心棒』に続く三作目に当たり、キャラクターも続投しているが、ストーリーと世界観は一新。前二作を遊んだことのないプレイヤーでも楽しめる新作になっている。
舞台となるのは近未来の荒野。鉄壁の守りを誇る「シティ」を中心に、自由を求めた民たちの暮らす「開拓地」の広がるこの世界に突如、謎の宇宙岩石生命体が空より襲来。守りに劣る開拓地は、次々と彼の者達に占領されていった。そんな宇宙岩石生命体に占領された開拓地を救うべく、そこから命かながら脱出した住民とアルマジロの青年「ジロー」、その相棒でリスのメカニックの「リッス」が奔走するという物語だ。
ジャンルは「バトルタワーディフェンス」という一風変わったタワーディフェンス・ゲームになっている。
「タワーディフェンス」は、平たく言えばリアルタイム方式の戦略防衛シミュレーションゲームで、「塔」に見立てた攻撃兵器をマップ上に建設し、進撃してくる敵を迎撃して拠点を守るという流れが同ジャンルでは一般的。プレイヤーのやることは攻撃兵器の建設ぐらいだが、本作はそれに加え、戦闘員となるキャラクターも操作して戦う。
つまり、アクションゲームのように3Dのマップを駆けつつ、敵へ直接殴り込みをかけられるのだ。ただし、戦闘は敵に触れた後、専用のフィールドへと切り替わって展開される方式。戦闘中もお構いなしに敵は進撃を続けるので、素早く倒して開拓地のマップに戻り、次の敵に対応していく形になる。
また、プレイヤーが操作する「ジロー」は動物のアルマジロがモチーフ。そのため、移動する時は体を丸めた形態となる。しかも、腰回りにジェットエンジンを装備。Aボタンでエネルギーをチャージし、ボタンを放せば猛スピードで疾走する、スピード感溢れまくるアクションが楽しめる。そんなジローを操作しつつ、マップ上の「砦」や中枢施設の「シェルター」に設置した武器も駆使して宇宙岩石生命体を迎撃しながら、敵勢力の全滅を目指す。基本的なルールはこのような感じだ。
これらの特徴は前二作の『ザ・ローリング・ウエスタン』を踏襲。ゲームの流れは、砦やシェルターの守りを固める「準備」、それを終えてからの「防衛」のふたつのパートで構成されていて、戦闘の流れも共通だ。
本作では、新たに「シティ」なる自由に動き回れる大型拠点マップが登場。ここで戦闘で役立つ装備品やアイテムの購入、資金稼ぎなどができるようになった。
また、シティで操作するのはジローではなく、故郷の開拓地より脱出した「住民」。この住民とはプレイヤーのことで、ジローとリッスを後方支援する第二の主人公として、物語に参加するのだ。プレイヤーは3DSに登録している「Mii」をベースに動物の姿になって参加。どんな動物になるかはゲームスタート時、ランダムで決定される。
シティだけでなく、戦闘にもプレイヤーは参加。ジローや砦、シェルターの武器では対応できない敵に攻撃を仕掛けたり、指示を出せば、戦闘時に連携することもできる。
さらにシティのあちこちにあるお店でアルバイトに従事すれば、資金をゲット。得られた資金は装備、アイテムの購入だけでなく、砦、シェルターに配置する攻撃武器を持つ支援ユニット「ガンナー」の雇用にも使われる。
前二作ではマップを駆けながら塔ごとに武器を買う形だったが、本作ではシティで武器を持つガンナーを雇って、戦闘本番前の準備で自由に配置する方式に。大分、煩わしさが薄れた。
関連して、防衛戦も前二作では三度(三日)に渡って実施される大ボリュームだったが、今回は一日だけ守り抜けばクリア。ゲーム全体のテンポもグンと良くなっている。
さらに残る宇宙岩石生命体の数が10匹以下になると、彼らは走行フォームに変身。そのまま、爆走する敵を追いかけて倒すレースイベントこと「デスチャージ」が発生するように。ひたすら追いかけ、体当たりなどの攻撃を駆使して倒していく戦闘イベントで、これもまた全体のテンポを底上げしている。
極めつけ、前二作では「スライドパッド+タッチペン」だった操作が全てボタン式に。
左利きのプレイヤーでも思う存分にバトルタワーディフェンスの醍醐味を満喫できる。
このように、より遊びやすくするための調整が施された作りになっていて、前二作に辛さを感じたプレイヤーも、本作で初めて触れるプレイヤーにも優しい内容にまとめられている。
<アクションゲームとタワーディフェンス、そしてレースゲームが融合した慌ただしい展開>
戦闘時の慌ただしさはかなりのもの。敵である宇宙岩石生命体がどこから攻めてくるのか、その進撃を途中で食い止めるにはどこに「ガンナー」を置くか、戦闘中、襲われそうな所はないかなど、色んなことを考えながら行動に移しては、状況に応じた切り替えも求められる、高い戦略性とアクション性に富んだ展開を楽しめる。ガンナーやプレイヤーの分身と連携し、無事に開拓地を守り切れた時の快感はひとしお。
<前二作から格段に遊びやすくなったゲームシステムと難易度>
本作の前作に当たる『ザ・ローリング・ウエスタン』は、万人向けが代名詞の任天堂のゲームとしては異例の高難易度と強い癖を誇るゲームだった。戦闘もさることながら、資源と資金の管理、地形を活用した立ち回りが求められたり、マップをクリアしても総合成績に応じてもらえる「★」が規定数ないと、次のマップに進めなかったり、操作においてはスライドパッドは使うも、残りは全てタッチペンで、ボタンは未使用。右利きのプレイヤーを前提にしたもので、左利きのプレイヤーには厳しい……などなど。
そんな難しく、癖の強かった部分が全て緩和されている。
特に操作は全てボタンで行うようになったので、右利きも左利きも関係なくゲーム全編を楽しめるようになっている。
戦闘も第二の主人公であるプレイヤーが参戦し、サポートしてくれるので、過度な窮地に陥りにくい。資金も集めやすいし、ゲームの進行に制限も入らないのでテンポ良く進めていける。
とは言え、戦闘の慌ただしさは前二作と変わらず。
疲労感を感じたら、少し休憩しよう。
<プレイヤーのアバターである「Mii」を活かしたユニークな仕掛け>
3DS本体に登録された「Mii」をプレイヤーの分身として送り込めるシステム。実は登録された「Mii」だけでなく、3DS本体に保存された「Mii」も対象。「フレンドリスト」、「すれちがいMii広場」のMiiが「ガンナー」として出てくる。
もちろん、少し前にやってきた「特別なMii」も対象。
お笑いコンビ「よゐこ」のふたりも「ガンナー」として雇用できる。
以上は筆者の感想ですが、濱口さんはエース級の活躍をしてくれるので、お薦めです。しかし、芸能人だけに(?)雇用額は高め。残り資金とよくご相談ください。
相方の有野さんは……実際に見てのお楽しみ。
<盛りだくさんなボリューム>
メインストーリーだけでも15時間以上、クリア後のストーリーや「バイト」、時折発生するタイムアタック形式の「レース」に象徴されるミニゲームも豊富に詰め込まれているのもあって、ボリュームは膨大。開拓地のマップに点在する「コンテナ」から「トレジャー」なる宝物を探し出す収集要素もある。
その「トレジャー」も思わず二度見してしまうラインナップ。ストーリーを進める際、何度も顔を合わせることになる「ヨーセツ」と呼ばれるもぐらのおじさんに見せると鑑定してくれ、どんなものなのかを解説してくれるのだが、その内容もツッコミどころ満載。特に「バボくん」と呼称された、任天堂の某ゲーム機を模したトレジャーの解説は必見。
アルマジロの「ジロー」、ネズミ……もとい、リスの「リッス」に象徴されるように登場キャラクター達は皆、動物。任天堂のゲームで動物をメインに据えた作品と言えば『どうぶつの森』だが、本作はそちらとは対照的に世界観は世紀末風。しかし、ストーリーはユーモラスな作風で、キャラクターも先の「ヨーセツ」の例からわかる通り、愉快な面々が揃っていて、ヒリヒリするほどの緊張感はない。ただ、終盤は火傷するほど熱い。思わずボタンを押す指に力が入り、汗がにじみ出る展開になるので必見だ。
常に慌ただしい内容のため、気軽に遊べる作りというには厳しいが、戦略要素の濃いゲームが好きな人にお薦めできる一本。前二作の難しさに悲鳴をあげ、クリアを断念してしまった人も、様々な尖った部分が丸く改められた作りへと一新されているので、リベンジの意志があればぜひ、挑戦してみて欲しい。
動物達をメインに据えた世界観に似合わぬ、濃厚で熱い展開がガツンとくる一本だ。
なお、ニンテンドーeショップと任天堂公式サイトでは体験版のダウンロードができる。オープニングのレースイベントしかプレイできないが、操作感や雰囲気は十分に掴めるので、当記事を読んで試していだけたら幸いだ。
【ゲーム情報】
タイトル:『ザ・デッドヒートブレイカーズ』
発売元・開発元:任天堂 / バンプール
対応ハード;ニンテンドー3DS
ジャンル:バトルタワーディフェンス
定価:4,980円+税(パッケージ版 / ダウンロード版)
(全年齢対象)
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