こんにちは、小林白菜です。
あなたは「フラッシュアニメ」ってご存知ですか?
「フラッシュアニメ」とはAdobe Flash(現Adobe Animate)で制作されたアニメのこと。現在もプロ・アマチュア問わず幅広く使われている制作手法です。
2000年代前半はインターネットで公開されるアニメーション作品のほとんどをフラッシュアニメが占めており、特に面白かった作品は、多くのインターネットユーザーの間で知れ渡ることになりました。某暗殺者に似たキャラクターが「吉野家」について愚痴る、こちらのアニメも大ヒットした作品のひとつ。
■【ゴノレゴシリーズ】01 吉野家 [ ポエ山 ]
しかしAdobeがFlashのサポートを2020年で終了するなど、現在のフラッシュアニメを取り巻く環境は、当時とはまるで違ってきています。かつてネットでは一強だったフラッシュアニメですが、今や淘汰される側になっているのです。
去る11月24日(土)、そんなフラッシュアニメがテーマのトークイベント「フラッシュアニメは死んだのか!? ~本音で語るアニメとカネ~」が阿佐ヶ谷ロフトAで開催されました。
この先、フラッシュアニメはどうなってしまうのか? これからもクリエイティブを追求し、お金を稼ぐことはできるのか……? 第一線で活躍するクリエイターたちが語り尽くしたイベントのレポートを、お送りしたいと思います。
■イベント開始!
会場となった阿佐ヶ谷ロフトAは超満員! 参加者、登壇者共に適度にビールを頼みながら進行していったイベントは、3時間を超える長丁場にも関わらず、最後まで笑いが絶えない和やかなムードで進行していきました。
今回壇上でトークを繰り広げた登壇者は9名。いずれもフラッシュアニメに詳しく、現在もアニメ業界の第一線で活躍する方々です。
【登壇者】
◆FROGMAN(フロッグマン)さん
・蛙男商会 代表、株式会社DLE 取締役
・代表作:『秘密結社鷹の爪』『古墳ギャルのコフィー』『土管くん』、他
◆A.e.Suck(エイサク)さん
・代表作:『FLASHアニメーション制作バイブル』『カンセンジャー』『キン肉マン』他
◆ルンパロ・チータさん
・代表作:『ズモモとヌペペ』、他
◆春日森春木(かすがもり はるき)さん
・代表作:『珍遊記 -太郎とゆかいな仲間たち-』『ザックリTV』『ディアホライゾン(被)』、他
◆塚原重義(つかはら しげよし)さん
・代表作:『ウシガエル』『端ノ向フ』「『SEKAI NO OWARI』ライブ演出アニメ」、他
◆前田地生(まえだ ちせい)さん
・株式会社Chisey 代表取締役、映像上映イベントFRENZ 主催
・代表作:『あおおに ~じ・あにめぇしょん~』『おしえて魔法のペンデュラム ~リルリルフェアリル~』『にゃんころり ~けんぷろ学園~』、他
◆青木隆志(あおき たかし)さん
・スタジオボイラー 代表
・代表作:『別府鉄輪地獄変』『探検野郎エキスプローラ』『ゆるっとフロンティア』、他
◆山本雄三(やまもと ゆうぞう)さん
・キャラクション 代表
・代表作:『まめねこ』『超ゼンマイロボパトラッシュ』『僕の妹は大阪おかん』、他
◆【MC】高達俊之(こうだて としゆき)さん
・コウダテ株式会社 代表取締役
・代表作:『Hi☆sCoool! セハガール』『京極夏彦 巷説百物語』『BUZZER BEATER』、他
イベントが始まると、当イベントのために制作されたオープニングムービーが上映されました。
■「フラッシュアニメは死んだのか!? ~本音で語るアニメとカネ~」冒頭ムービー
内輪向けな内容に少々面食らったものの、パロディネタの悪ノリ具合や自由な展開は、確かにイニシエのインターネットに存在した空気感。懐かしい気持ちになります。
■Flash20年の軌跡
イベント前半のメインテーマは「Flash20年の軌跡」。フラッシュアニメのこれまでの歴史を振り返ることで、現状を見つめ直そうという試みです。
ここでは「紅白Flash合戦」がはじまった2002年が今振り返れば「フラッシュアニメ黄金時代」だったことや、2005年の「のまネコ問題(※)」、2008年にスティーブ・ジョブスが発表したiPhoneのFlash非対応が事実上のFlashへの死刑宣告になったことなどを振り返りました。
※ のまネコ問題……個人サイトで公開されたフラッシュアニメ(のちの「恋のマイアヒ」ブームの切っ掛け)に登場していたキャラクターに酷似したキャラクターを、エイベックスが商標登録しようとしたことで、ネット上で強い反発が起きた騒動。
■生フラッシュアニメ『なまろく!』
イベント中盤ではゲストの声優、あおきまおさん、池羽悠(いけばゆう)さん、五味茉莉伽(ごみまりか)さんが登壇。イベントの目玉のひとつであるによる生フラッシュアニメ『なまろく!』の公開収録が行われました。
『なまろく!』で用いられたプログラムは、画面に表示されたキャラクターたちが、マイクに発した声に反応して口パクを行うというもの。さらにこのキャラクター、声優さんたちがコントローラのボタンを押すことで身振り手振りや表情の変化といった反応まで示してくれるんです(ちなみに使われていたコントローラはスー◯ァミのものでした)。
暴風雪六花(ぼうふうせつりっか)さんがデザインを手掛けたキャラクターたちはとても可愛らしく、声優さんたちの天真爛漫な演技もあってとてもほっこりした空気が会場を包みます。
この生Flashアニメの仕掛人は登壇者のひとり、青木隆志さん。このプログラムを使えば短時間で大量の動画が容易につくれるとのことで、フラッシュアニメの新たな可能性のひとつと言えそうです。
■アニメとカネ
イベント後半のメインテーマはいよいよ「アニメとカネ」。
1話ごとの固定報酬制で依頼を受けたWebアニメが、第1話は90秒だったのが回を重ねるごとに尺が伸び、最終的には報酬の秒単価が3分の1以下になってしまったという失敗談をはじめ、アニメ業界の表も裏も知り尽くした面々による赤裸々なトークの数々が飛び出します。
興味深かったのは、ユーチューバーが台頭する現在、ネット上の動画の作り方自体が大きく変わってきているという話題。
視聴者が続きを観るか別のページに移るかが、動画の最初数秒で決まってしまう今の環境では、最大の見せ場を最初にネタバレしてしまうなど、これまでの常識と異なる方法がセオリーとして確立しつつあるのだとか。
現在Youtuberとしてデビューを果たしているFROGMANさんも、この部分のギャップに驚いているとのこと。
■「沼と蛙」第1話
しかし登壇者は全員「みんなが同じ方向性を目指す必要はない」という見解で一致していました。
そしてフラッシュアニメも、ネットでの存在感こそ失いつつあるものの、アニメ制作の技術としては今後も様々な現場で活用され続けるだろうと結論付けました。
■まとめ
ここまで、トークイベント「フラッシュアニメは死んだのか!? ~本音で語るアニメとカネ~」のレポートをお送りしてきました。
結論としては、フラッシュアニメは死なず、今後も形を変えて生き続けることでしょう。
ネット上での存在感こそ失いつつありますが、それ以外の場所で確実にその技術は継承され続けているからです。
全編Flashで制作された劇場アニメ『夜明け告げるルーのうた』がアヌシー国際アニメーション映画祭長編部門にて最高賞を受賞したのはその最たる例でしょう。
■『夜明け告げるルーのうた』予告映像
当イベントで公開収録された生フラッシュアニメ『なまろく!』のプログラムも、商品化されればアマチュアのクリエイターや声優さんが手軽に動画を作るために活用されるかもしれません。
また登壇者のひとり、塚原重義さんは、現在オリジナルアニメ『クラユカバ』を制作中。こちらは近日クラウドファンディングが開始されるとのことです。
■クラユカバ / KURAYUKABA Teaser PV 「始動篇」
時代の変化、技術の移り変わりによって今まさに淘汰されようとしている「Flash」。けれど「フラッシュアニメ」が持つ魅力は、今なおクリエイターたちの心を掴んで離しません。
今後、どんなフラッシュアニメが世に出てくるのか、楽しみです。
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