昨今、2000年代の現役を退いたゲーム機で生まれた作品が後継の上位機へとリマスターされ、販売されるケースが相次いでいる。しかし、そんな作品の中にも、知名度が低いなどの事情から注目されず、ゴールデンハンマー化しているものが僅かに存在する。
そのような作品より一本、『Darksiders Warmastered Edition(ダークサイダーズ ウォーマスターエディション)』を今回紹介する。
本作は2010年3月、PlayStation 3、Xbox 360用ゲームソフトとしてKONAMIより販売された『ダークサイダーズ 審判の時』をリマスターした作品。2016年11月22日に海外先行でPlayStation 4、Xbox Oneに、後に続く形でPC、WiiU、Nintendo Switch版が発売された。日本では2017年11月24日にPlayStation 4版がTHQ Noridicより、2019年4月25日にNintendo Switch版がワーカービーより発売されている。
そもそもダークサイダーズとはどんな作品か?
ダークサイダーズとは、マーベル作品などを手掛けるアメリカン・コミックス作家ジョー・マデュレイラ氏が立ち上げたゲームスタジオ「Vigil Games」が制作したアクションアドベンチャーゲームだ。クリエイティブディレクターもマデュレイラ氏自ら担当している。
作中の舞台としているのは新約聖書「ヨハネの黙示録」に記された「終末」。それに至る「七つの封印」が四つ解かれた時、降臨すると言われる「黙示録の四騎士」を主人公に据えたストーリーを描いている。
本作の主人公は”戦争”を意味する「ウォー」。他に「デス(死)」、「フューリ(憤怒)」、「ストライフ(紛争)」の三人がいて、それぞれの活躍は後発の続編で描かれている。2019年時点で三作が発売されていて、全五部作を予定しているという。
ちなみに二作目から三作目の発売まで、6年もの空白が空いているのだが、これは販売元の倒産、それによる「Vigil Games」解散が起因している。詳しくは割愛するが、紆余曲折を経てシリーズは再始動し、本作がその第一弾として発売されるに至ったのだ。
前置きが長くなったが、内容の紹介に入っていこう。
基本的には三人称視点で展開する、3Dのアクションアドベンチャーゲームだ。主人公のウォーを操作し、人類及び文明が滅んだ終末世界を探索していく。
最終目的はウォーの潔白を証明すること。物語は黙示録に記された終末が現代社会に襲い来る所から始まる。無数に降り注ぐ隕石より生まれ出た悪魔、それを討伐せんと戦う天使による地獄絵図が描かれる最中、ウォーは召喚される。だが、それは異常事態だった。四騎士解放の条件(四つの封印解除)が成立していなかったからである。
結果、ウォーは戦いに巻き込まれた末、悪魔の中でも取り分け凶悪な「ストラーガ」に敗北。そして、封印が解除されていないのに現代社会の調和を乱し、終末を招いたとして咎められてしまったのだ。とばっちりにもほどがある。
なぜ、このような目に遭ってしまったのか?
真相を突き止めるべく、ウォーは終末世界へと降り立ち、探索に挑むことになるのだ。
具体的には終末の戦いおける勝者「破壊者」なる勢力の中で、「選ばれしもの」と称される四名の心臓を手に入れ、かのストラーガと事件の背景を知る何者かが待つ「黒の玉座」の道を解放することだ。本編は件の玉座に近い「炎火の絞首台」なる場所を起点に、それぞれの「選ばれしもの」が統治するエリアへと足を運び、探索しながら最深部で彼らと戦う流れを繰り返していく形になる。
ものすごく乱暴に言うと『ゼルダの伝説』である。謎解きと戦闘を交互にこなしながら進めていくのだ。しかも、「選ばれしもの」の居城というのがまごうことなき「ダンジョン」。閉ざされた扉を開くためのカギを探し出したり、特殊なアイテムを手に入れて攻撃手段を増やしたり、パズルを解いたりしながら進めていく”アレ”なのである。
しかもこれに限らず、戦闘も特定の敵に狙いをつける「注目(ロックオン)」が可能! その際には画面上下部分に黒縁も表示! 武器もメイン装備の大剣「カオスイーター」のほか、各種ボタンに特殊なアクションを可能とする「アイテム」も用意!
まさに隠す気一切なし! そんな訳で、本作のことはゼルダと明言せざるを得ないものになっている。とは言え、全部が全部ゼルダではない。大剣「カオスイーター」を使い込むことによる成長要素、敵を倒すと得られる「ソウル」を消費しての攻撃技拡張と言ったシステムもある。戦闘も集団を相手にすることが多く、状況に応じて広範囲に及ぶ技を用い、巻き込むよう攻撃する立ち回りも試されるなど、似ているようで異なるバランスだ。
敵に一定ダメージを与えた後、表示されるボタンを押せばフィニッシュ技を決められるのも特徴の一つだ。「あれ?けど、それって……」とゲームをよく遊ぶ人は既視感を抱いたかもしれません。はい、その通りです。『ゴッド・オブ・ウォー』です。先のソウルも自動的にウォーが回収(吸収)する仕組みで、ほぼ『ゴッド・オブ・ウォー』だったりする。(厳密に言うと『デビル・メイ・クライ』由来のものである)
なので、実の所は「ゼルダの伝説+ゴッド・オブ・ウォー」でもあるのです。
おいおい、名作いい所取りじゃないかよ。ええ、まさしくそうですけど、何か?
そんなこんなで、アクションアドベンチャーとしては王道、悪く言えば「ありきたり」な作りになっている。世界観こそ独自性強めなのだが、ゲーム部分は馴染みありすぎとしか言い様がない、様々な意味で真逆の内容なのだ。
先の通り、本作を構成するシステムの大半は名作と謳われる作品を下地とした「いい所取り」。しかも、少しネタバレになるが、ゼルダ、ゴッド・オブ・ウォー以外にも他にもこんなゲームのネタが”自重なし”で登場する!
巨大な竜にまたがって、敵を撃ち落とす!
なんとビックリ、ロックオンシステムも完備の『パンツァードラグーン』!
フックにワイヤーを引っ掛け、その勢いを利用して大ジャンプ!
アクションゲーム好きには名の知れた『バイオニックコマンドー』!
GO!GO!バイオニック!(Song By:水木一郎)
色分けされた空間をこじ開け、そこに飛び込んでアクションを決める!
まさかまさかの革新系FPSの名作『ポータル』!(ケーキはもらえません!)
さらに武器にも大剣以外に、拳銃なんてものもある。Rスティックを押し込めば視点も変わり、その時にはギアーズ・オブ・ウォーなサードパーソンシューター(TPS)な構図に。このように実に多くの名作を元に細かい部分が作られているのだ。なので、元ネタを知る人ならば思わずニヤリとすること確実。悪く言えば、ゲームとしての真新しさはない。
だが、それがいい。本作はこの新しくない所が最大の魅力なのだ。特にまとめ方が上手い。互いが喧嘩し合わず、それぞれの長所を活かした作りになっているのである。
ゼルダの注目システム、ゴッド・オブ・ウォーの一対多をミックスした戦闘は、双方の魅力を絶妙なバランスで表現した屈指の見所だ。時に豪快に大勢を巻き込みつつ、強力な敵には一対一の戦いに持ち込んで一瞬の隙を突く。緩急が見事に表現された展開には、思わず時間を忘れて画面にくぎ付けとなってしまうはずだ。
イベントの豊富さも圧巻。先の『パンツァードラグーン』は序の口。他にもウォーに助力するキャラクターとの共闘、広大な砂地を徘徊する巨大ワームの隙を突いて目的地を目指すステルスゲーム的な展開など、そのバリエーションは多く、最初から最後まで、プレイヤーを退屈させることなく楽しませてくれるのだ。
筆者はボス戦を特に推したい。ゼルダのお約束を踏まえつつ、本作特有の豪快さを混ぜ合わせた手に汗握る展開が味わえる。ボスへダメージを与える手順にも、本作の世界観ゆえにできた”豪快”の極みなものがあるので必見だ。
場合によっては、サド(S)の気に目覚めるかもしれない。
ゲーム中のムービーデモを見れば一目分かる通り、主人公の「ウォー」は体格の大きなキャラクター。武器も大剣をメイン装備とするので、重々しい印象を抱いてしまうだろう。
だが、実際の操作は見た目に反して軽快。驚くほどキビキビ動いてくれる。ジャンプも可能で、それも全く重々しさを感じさせないどころか、連続して対応するボタンを押せば二段ジャンプも決められる、抜群の機動性を誇る。
ゲームが進めばジャンプ後の飛距離を伸ばす対空降下、先のワイヤーに象徴させる特殊アクションも可能となり、大剣で繰り出せる技もどんどん増える。そして、いずれも僅かなボタンの組み合わせと連打で手軽に繰り出せるので、アクションゲームに苦手意識のある人も技の豪快さを堪能できる。
動かすだけでも楽しいのは良いアクションゲームの象徴だが、本作はそこもバッチリ押さえている。ウォーの見た目からして「ウソだろ」と思うかもしれないが、大事なことなのでもう一度言おう。
見た目に反して、とっても軽快です。
舞台である終末の世界は元・現代社会の都市ということで、高層ビルにダクト(パイプ)、図書館などのロケーションが多く登場。道中にはスクラップと化した自動車も多く散らばっている。
そんな元現代の都市で悪魔や天使と言った、ファンタジーなキャラクター達が暴れ回る。その様子だけでも、他に類を見ない独自性がある。現代社会が健在だった頃、それらはどんな風に使われていたのか。そんな思いを馳せながら探索を楽しめるのも見所だ。
ボリュームもメインストーリーだけでも20〜25時間以上、隠された強化アイテムの収集要素も盛り沢山と非常に大きい。ゲームクリア後に一部のアイテムを引き継いで、最初から遊ぶ周回要素もあるほか、難易度も「イージー」、「ノーマル」、「ハード」の三種類があるので、全てをやり尽すなら長いこと遊べる。
ローカライズも凝っていて、ムービーデモでの会話はフルボイス、それも日本語吹き替え仕様。声優もそれぞれのキャラクターにマッチした方々がキャスティングされていて、雰囲気抜群。主人公ウォーのカッコよさは必見だ。
ただ、旧約聖書の黙示録を知っていること前提で世界観が作られているため、ストーリーは難解。この辺りは日本では旧約聖書のことに関し、一般レベルで馴染んでないことへの差が現れている感じだ。また、中盤以降に唐突な展開が多く、何が起きているのか分からなくなりやすいのは難ありと言わざるを得ない。
そんな独特のハードルの高さはあるが、ゲームは抜群に取っ付きやすく、傑作と豪語できるアクションアドベンチャーに完成されている。このジャンルが好きな人ならぜひ、遊んでみて欲しい一本だ。世紀末と化した元現代の世界で、大柄の騎士になって悪魔と天使達を狩り倒そう。そして、どこかで見たことのあるイベントに挑戦だ。
なお、日本国内ではXbox One、WiiU版は未発売のため、購入できない。ただ、Xbox Oneに関してはオリジナルのXbox360版『ダークサイダーズ 審判の時』がダウンロード販売されていて、後方互換機能で遊ぶことができる。Xbox One Xのエンチャント機能にも対応しており、より鮮明になった映像でも遊べるので、ハードをお持ちであればぜひお試しあれ。
【ゲーム情報】
タイトル:『Darksiders Warmastered Edition(ダークサイダーズ ウォーマスターエディション)』
発売元・開発元:THQ Nordic / KAIKO / Vigil Games / ワーカービー
対応ハード:PlayStation 4、Nintendo Switch、PC(Windows)
ジャンル:アクションアドベンチャー
価格:1,980円[税込](PC)、2,241円[税込](PlayStation 4)、3,035円[税込](Nintendo Switch)
関連リンク:
■THQ Nordic公式サイト(※リンク先:英語)
■商品&購入ページ:PlayStation 4版(PlayStation Store内)
■マイニンテンドーストア:商品&購入ページ(Nintendo Switch)