気が付けば、100本は超過しているであろうNintendo Switchのダウンロードソフト。『ブレイブダンジョン+魔神少女COMBAT』の回と被る出だしだが、今回もまた、そんな群雄割拠なNintendo Switchのダウンロードソフトからのピックアップである。以前は2017年、一週間に販売されるゲームの本数が少なかった時期を対象とした。今回は逆にゲームの本数が爆発的に増えた時期、それも比較的最近の2019年3月に発売されて間もないゲームを取り上げる。
ゲームの名は『Roling Gunner(ローリングガンナー)』だ。
本作は同人ゲームサークル「あるふぁ〜秘密基地」所属で、某ゲーム開発会社の元スタッフである小泉大輔氏、同じく同人ゲームサークル「HelloWorldProject」所属で、本業もゲーム開発者として活動しているisk8086氏のタッグが制作した、全6ステージ構成の横スクロールシューティングゲーム。Windows PC用ソフトとして、2018年に発売された作品だ。Nintendo Switch版の制作は家庭用ゲーム機版『メゾン・ド・魔王』、リメイク版『鋼鉄帝国』などを手掛けたゲーム開発会社「メビウス」が担当している。
人類繁栄のために作られたセントラルコンピュータ「BAC」。ある日、全ての機械兵器を支配し、地球を自らの支配下に置くべく人類に反旗を翻す。BACに依存していた社会は大混乱に陥り、地球は一ヶ月足らずで人口が半減する、甚大な被害を受けてしまう。
これ以上の侵攻を食い止めるべく、対BAC制圧用独立制御型兵装「ローリングガン」を搭載した戦闘機「RF-42R STORK」が出撃。西暦2061年3月18日、”Operation Downfall”と称された唯一の反撃を開始した。
果たして人類に勝機はあるのか。このまま滅びゆくだけなのか。
これぞシューティングゲームなオープニングストーリーと共に始まる本作は、その内容も期待に違わぬ王道中の王道。続々と襲い来る敵をショット攻撃で撃墜しながら、ステージ終盤に待ち構えるボスの撃破を目指す。
システム周りも横スクロールシューティングの基本を踏襲しつつ、「ローリングガン」なるオプション兵器による独自の戦術性を実現。シューティングゲームのオプション兵器と言えば、自機に追随しながら自動的にサポート攻撃をしてくれるものという印象がある。本作はその名が示す通りに360度、全方位への攻撃が可能。さらにプレイヤー側で任意に狙いを定められる、干渉可能な設計。自機は前方の敵に集中、オプションは後方などから来る敵に対応という役割分担しながらの立ち回りができるのだ。
その関係で本作は敵が四方八方から続々と登場。自機が撃墜されても(ミスしても)失われることなく残り続けるのもあって、それぞれが対応するべき方向を考えながら迎撃に当たる、戦術的なプレイ感を演出した要素になっている。
パワーアップシステムも特徴のひとつ。
いわゆる専用のアイテムを取得して強化するのではなく、溜まったエネルギーを消費して一定時間、強化状態にするという制限付きの仕組みになっている。エネルギーは敵が撃墜される度に落とす「勲章アイテム」を集める度に増えていき、数値が1000に達し、全体攻撃武器の「ボム」を発射するボタンを押すことでパワーアップ状態に移行。自機周囲に表示される「エネルギーゲージ」が尽きるまでの間、強力なショットを撃ち続けられる。
さらにこの状態で「勲章アイテム」を取得すると、エネルギーゲージ内に赤い「リミットゲージ」が出現。10%を超えたタイミングで対応ボタンを押すとリミッター解除の状態になり、ローリングガンから放たれるショットが大幅強化。主にボスに対しては甚大なダメージを与える、事実上の必殺技として活躍するのだ。
弾幕回避に使えるのも特徴。本作はシューティングとしては弾幕系に属する作品で、画面上に多くの弾が飛び交う。ただ、パワーアップを使えばこれらの弾幕をかき消せる。
「避けきれない!」という時に発動すれば、ピンチを凌ぐこともできてしまうのだ。
とは言え、時には隙間を潜り抜けることも求められるが。それでも、簡単に回避できる……というより、無かったものにできる方法が用意されているのは、有り難い配慮と言えるかもしれない。(※システム的には他にも似たケースがあるので、真新しさはないが)
総じてシューティングゲームとしては王道中の王道だが、ふたつの要素によって独自のプレイ感を演出。中でもローリングガンの全方位攻撃は縦スクロールな展開も実現しており、さながら縦横がコラボしたと言っても過言ではない不思議な手応えを出している。まさに懐かしいけれど新しい、興味深いフィーチャー満載の作品になっている。
パワーアップ実施で弾幕が消滅、そこからリミッター解除で致命的なダメージを与えられる多くのメリットが得られるため、どのタイミングで実行し、解き放つかを考えながら進めていくのが非常に楽しい。特に各ステージ最後に登場するボスは、いずれも多彩な攻撃を仕掛けてくるので、それらを読み切って潜り抜け、ここぞという時に撃ち込んで、トドメをさせた時の快感は格別。文字通り、手に汗握る攻防を存分に堪能できる。
弾幕消滅のメリットがあるのも、この手のシューティングゲームに苦手意識のあるプレイヤーには嬉しいところ。それもあって、積極的に使っていく気持ちにもさせられ、システムがちゃんと存在感を発揮している。地味なところだが、こういう細かい調整が入念に施されているのもちょっとした魅力である。
断言するが、本作の難易度は非常に高い。難易度は簡単なカジュアルから標準のオリジナル、最高難易度のエキスパート、そして単独モードで用意されたノービスが選べるのだが、一番簡単と言われるノービス、カジュアル共に難しい。特に終盤はその名に偽りありの苛烈な弾幕が画面を覆う。時にはパワーアップやボムで対処するのも困難な場面すらあるほどだ。
だが、全体のバランスは良心的。確かに終盤こそかなりの難易度だが、コンティニュー制限はなく、いくら残機が無くなろうが何度でも途中からリトライ可能。根気さえあれば確実にクリアできるようになっている。また、繰り返しプレイする度に苛烈な弾幕を潜り抜けるためのパワーアップ、ボム照射のタイミングが洗練されてくるほか、潜り抜けも自然に行えるようになるなど、プレイヤーの上達がハッキリと現れるようになっている。
また、ローリングガンの性質もあって、道中では全方向から敵が迫ってくるが、後方や上などの突飛な方向から来る時には決まって警告サインと赤いシミ(?)が出る。そのため、不意打ちを受けることがほとんどない。さらに被弾すれば即ミスにもならない。「ボム」があれば、それが一時しのぎのシールド(オートボム発動)になってくれるのだ。
「ボム」を直接使うのもまた、窮地を潜り抜ける際に効果的。しかも、被弾時に発動する「オートボム」より効果が長い。そのため、慣れてくるとオートボム発動を見越してボムを撃つ癖がつき、立ち回りが洗練されていくのである。
それでも基本は辛口だが……安易に断言できない妙味がある。
特に上達した嬉しさは格別で、この手のシューティングが苦手なプレイヤーほど感動を味わえるものになっているので体験する価値ありだ。最初は苦しいかもしれないが、粘ってみて欲しい。さすれば、本作の練り込み具合がよく分かる。
個人差によるが、一周に要する時間は大体早くて1時間、長くて2時間ほどとシューティングゲームの王道に則ったコンパクトなボリュームに収まっている。ただ、ローリングガンとパワーアップシステムの特徴も相まって、どこも展開に応じた戦術の切り替えと実践が求められるため、ひとつのステージをクリアするだけでも相当な充実感が得られる。敵の出現パターンもトリッキー、背景もストーリー性を感じさせる切り替わり方をするなど、敵配置や演出も細部まで凝っていて、常にプレイヤーを画面へと釘ぎ付けにさせる。
ローリングガンのおかげで、横スクロールながら縦スクロールな迎撃が求められる独特な展開が随所で挟まれるのも見所だ。それに合わせて横方向から来る時の圧縮感の無さも秀逸。まさにワイド表示さまさまだ。
こちらがゲームのタイトル画面。
そこからのセレクト画面。
ステージクリア後のデモ。
1990年代、具体的にはタイトーからリリースされたアーケードのシューティングゲームを遊び込んだ世代なら、”むせる”ものを感じたかもしれない。
実際、グラフィックから音楽に至るまで、その頃のシューティングを露骨に意識した仕上がりで、さながらタイムスリップしたかのような錯覚を味わえるのだ。
しかも、本編の楽曲は元タイトーのCOSIOこと小塩広和氏(※代表作:スペースインベーダーエクストリームなど)が手掛けている。
隠す気ありません。もちろん、どの楽曲も素晴らしい出来だ。
自機とオプションのふたつを使いこなす関係で懸念されるのが操作性だが、これも良好。左のコントロールスティック、方向キーのひとつでふたつを動かすスタイルになっている。動かす対象がふたつあることから、右スティックも用いるスタイルを想起するかもしれないが、普通にシングル方式。昔ながらの感覚で遊べる。
ただ、自機が右に進めば、オプションは左回りに回転するという逆転式のため、慣れが必要。さらに動かせるのはショットを撃っていない時のみ。くれぐれも敵の攻撃が激しい時には実施せぬよう。蜂の巣にされても自己責任ということでご了承のほどを。
先も触れたが、低難易度ですらプレイヤーに容赦なく牙を向いてくる難点はあるが、ローリングガンの存在もあって独特な手応えに富んだシューティングゲームに仕上がっている。
シューティングが苦手な人へのフォローも充実しており、最初の壁を乗り越えることで、弾幕シューティングに対する見方が著しく変わる。
このジャンルが大好きな人はもちろんのこと、このジャンルに苦手意識のある人も勇気を振り絞って挑む価値が大いにある力作だ。このむせ返る90年代の雰囲気に覆われた熾烈なドッグファイトに身を投じ、弾幕シューティングの醍醐味を堪能しよう。
【ゲーム情報】
タイトル:『Rolling Gunner(ローリングガンナー)』
発売元・開発元:メビウス / Project Rolling Gunner
対応ハード:Nintendo Switch
ジャンル:本格派横スクロールSTG
価格:2,480円[税込]
関連リンク:
■Rolling Gunner(ローリングガンナー):メビウス公式サイト
■マイニンテンドーストア:商品&購入ページ(Nintendo Switch)