既に100本を超過していると思しきNintendo Switchのダウンロードソフト。本体が出て間もない2017年前半の頃は、一週間の内に発売される本数も少なく、それぞれに注目が集まりやすい状況だった。だが、同年後半からは大幅にその数が増加。昨今は新作すら見落とされやすい状況になった。さらに2017年の初期に発売された作品に至っては、ほぼ全てが片隅へと追いやられてしまっている。
そして、いくつかのゲームがゴールデンハンマーと化しているのだ。
そんな訳で、今回はNintendo Switch初期、まだダウンロードソフトの本数が多くなかった頃に発売された作品の中から一本、『ブレイブダンジョン+魔神少女COMBAT』を紹介する。
本作は同人ゲームサークル「INSIDE SYSTEM」制作のロールプレイングゲーム(RPG)。元はニンテンドー3DS用ダウンロードソフトとして発売された作品で、その移植版となる。移植に当たってグラフィックは高解像度化。さらに新キャラクター数名の追加、新作対戦カードゲーム『魔神少女COMBAT』も収録。二本立てのお得なゲームへと様変わりした。
ちなみに『魔神少女』とはニンテンドー3DS、PC、PlayStation Vita向けに発売された横スクロールアクションゲーム。これまでにシリーズ三作、外伝一作がフライハイワークスより発売されている。
そんなシリーズのスピンオフが『ブレイブダンジョン』だ。
その内容はダンジョン探索をメインとするRPG。「ゴッズヒル」と呼ばれるダンジョン奥深くに眠ると言われる「マジックアイテム」を求め、”死神”の愛称で呼ばれるトレジャーファイター「アル」が冒険を繰り広げるというものだ。
基本的に拠点の町「ニューポート」で準備を整え、ダンジョン探索に挑むという流れでゲームは進む。ダンジョンは最終目的地の「ゴッズヒル」も含めて五種類、それぞれが四つの階層(フロア)で構成されている。
各ダンジョンのクリア条件はフロア4に待ち受けるボスを倒すことだ。倒せばダンジョンクリアになり、次のダンジョンへの道が……開かれない。そもそも、最初から開かれている。
実は五つのダンジョンは最初から全て選択可能。どこからでも攻略を始められるのだ。なので、攻略順序は決まっておらず、プレイヤーの思うがままに進めていける作りになっている。いきなり最終目的地「ゴッズヒル」に挑んでもいいのだ。
ほぼ確実に返りうちにされるけど。
さらに言うなら、ダンジョン全ての攻略も求められない。要は十分にキャラクターを育て、準備が整ったなら、最終目的地に突撃して攻略に徹するもよかろうなのだ。ある程度計画を練ることが必要となるが、このような仕組みもあって、攻略自由度は非常に高い。まさにプレイヤーがやりたいように遊べるRPGになっている。
システム周りもその特徴を際立たせた作りだ。例えばパーティ。アルも含む最大三人で編成できるのだが、そのメンバーを誰にするかはプレイヤーが自由。しかも、最初から複数人の選択肢を用意。色んな組み合わせを試せるのだ。
もちろん、あえて一人旅に出てもよし。そもそも、メンバーはアル以外のほぼ全員がストーリーに絡まず、本編にも関連イベントが皆無。誰かを選ばないといけないみたいな縛りが一切ないのである。そのため、誰を入れようが支障なし。当然ながら、探索と戦闘は厳しくなるが、それでも意外になんとかなるよう作られている。
育成も自由度高め。そして、少し独特。
戦闘で得られた経験値でレベルアップするのだが、体力以外のステータスが上昇しない。ステータス全般は拠点の町で、同じく戦闘で経験値と一緒に得られる「トレース」、いわゆるお金に当たるアイテムで強化、または宿屋の「素材アイテム回収依頼」をこなすと得られる「ゴハンコイン」なる特殊なお金を払い、食事させて強化するのだ。
なので、トレースのある限り一気に底上げ可能(※食事の場合は何が上昇するかはランダム)。どのステータスを強化するかもプレイヤーが自由に選べるので、まさにやりたい放題だ。ちなみにレベルも「クラスチェンジ」なる強化を図るに当たり、上げることが条件になる。体力以外強化されないなら、上げなくていい訳でもない。相応の意味も設定されているのだ。
他にも数多くの特徴的なシステムがあるのだが、全てに共通するのは自由であること。とにかく、最終目的地の奥深くにあるとされた秘宝を見つければそれでいい。
そんなサッパリした設定と、そこに至るまでの作戦を考え、実行する楽しさに特化した作りが魅力のRPGに仕上げられているのだ。
ちなみにNintendo Switch版にて追加された新作『魔神少女COMBAT』は、三枚のカードを選び、三回戦で構成された戦闘を勝ち抜いていくという内容だ。シリーズに登場した雑魚敵を始めとする多くのキャラクターがカードとして登場し、それを用いてデッキを構築し、12に及ぶ「リーグ」に挑戦していく形となる。
カードゲームというと、入り組んだルールを想像するかもしれないが、本作で行うのは基本的にカード同士をぶつけて結果を見守ること。プレイヤーが介入する要素はほぼなく、気軽に遊べる作りになっている。
唯一、カードに「属性」なるものが設定されているが、これもグー、チョキ、パーのじゃんけんにちなんだものになっているので覚えやすい。そして、有利な方なら強力な攻撃が発動しやすくなるなど、導き出される結果も想像しやすくなっている。
『ブレイブダンジョン』の密度が濃い関係で、おまけ的な印象が強いが、数百枚に及ぶカードにそれぞれを育成する要素もあったりとボリュームは十分。シンプルながらも内容は盛り沢山とも言えるカードゲームだ。
最初から最終目的地も含めた全ダンジョンへ行き来可能、決められた攻略順序もなし、パーティメンバーも自由に決められ、いざとなれば一人旅を続けてしまってもよし。どのようにキャラクターを強化するかもおまかせ。全てにおいて縛りという縛りがなく、プレイヤーの思うがままに遊べてしまう。
一応、初期状態でゴッズヒルに挑むと返りうち濃厚、ダンジョンは選択画面の並び通り上から順に難しくなるなどの設定はある。
特に後者に従えば、極端な難易度上昇を経験することもなく進めていける。だが、そうしなければならない決まりはない。上昇覚悟で挑むも、安全策を取るもプレイヤー次第。
そうも自由に決められるので、終始、色んな攻略法を試したり、楽しんだりしながら遊べる。また、色々できるからこそ、二周目以降も新鮮な気持ちで楽しめる。嬉しいことに引き継ぎ機能を始めとするオプションもクリア特典で用意されているので、やり込み派のプレイヤーもニッコリ間違いなしだ。
ストーリーにちなんだイベントもなければ、戦闘開始時のロードも無し。肝心の戦闘もスピーディな上、強力な攻撃を実施した時の演出も冗長さなし。ダンジョン内でキャラクターが移動する速度も速く、それを上昇させる特殊なアイテムも用意されているなど、何かしらストレス要因になりかねない部分を徹底的に潰しており、とにかくプレイしていて気持ちよい。
また、戦闘で全滅しても拠点の町に戻されるだけ。その拠点の町へ一瞬で戻れるアイテム(※要購入)もあるので、素潜り感覚で探索を進める攻略法にも完全対応している。
まさに”痒いところに手が届く”を体現した設計だ。
ただ、ダンジョン探索中の途中セーブは不可能。(※セーブは拠点限定)
手応えを出すべき所は出す、割り切りもちゃんと実施されている。
攻撃特化、回復・ステータス強化の特技を持つなどの個性付けがしっかりしており、それぞれを仲間に入れたなりの独自の戦術が楽しめる。基本的にどのキャラクターを選んでもクリアできるよう、ゲームバランスも調整されていて、気軽に色んな組み合わせを楽しめる。
Nintendo Switch版にはオリジナルの3DS版にはいなかったキャラクターが二人追加され、より多彩な組み合わせを考えられるようになっている。高解像度化により、演出が派手になった切り札の必殺技こと「リベンジマジック」も見所だ。
魔神少女シリーズの見所の一つでもある、可愛らしいドット絵は本作も健在。雑魚敵、一部キャラクターは同シリーズのものをそのまま流用しているのだが、いずれも表情豊かに動くので、見ているだけでも楽しい。
もちろん新規のドット絵も。特にダンジョン最深部で待ち構えるボスは、熟練のドット絵職人によって描かれたものになっている。いずれもダイナミックな動きと怒涛の攻撃で攻め込んでくるので要注目だ。
他に一周大体5〜7時間の手頃なボリュームも魅力。RPGとしては短めだが、豊富なやり込み要素が揃っているので、それらを極めれば10倍近い時間を要することになるはずだ。
……と、一通り紹介したが、「あれ?全部、ブレイブダンジョンの話じゃね?魔神少女COMBATどこ行った?」と、ここまで読んで思ったかもしれない。
実の所、『魔神少女COMBAT』は厳しい出来。
ルールこそ簡単で取っ付きやすいのだが、戦略性がほぼなく、基本、三枚選んでぶつけ合うだけで結果も運に左右される大味な作りに落ち着いてしまっている。
一応、2019年現在は何度かのアップデート実施で様々な修正が実施されたことにより、発売当時よりかは遊びやすくなっている。
しかし、カードのぶつけ合いであることに変わりはなく、プレイヤーが介入する余地もないので、ゲームとしての手応えは薄い。ただ、強いカードが揃ってくると、相手をなぎ倒す爽快感が味わえる。そこに至るまでにレベルを上げるなどの手間が必須となるのだが、根気に関しては負けないものをお持ちなら、ぜひ挑んでみて欲しい。それなりに楽しめるはず……だ。
厳しいことを書いてしまったが、『ブレイブダンジョン』の出来は申し分なしだ。実はNintendo Switchの動画撮影機能に最初に対応した任天堂以外のゲームソフトという、輝かしい実績も持つ本作。発売から大分経つが、気軽に遊べてやり込めるRPGをお求めなら、声高におすすめする一本だ。
最後に余談ながら、続編『ブレイブダンジョン 正義の意味』もNintendo Switchのダウンロードソフトとして2019年発売を目指して制作が進められている。大幅なボリュームアップを施した正統進化系の続編になるようなので、興味がある方は公式サイトの動向を要チェックだ。イベントへの出展も頻繁に行われているので、そちらで確かめてみるのもよしです。
【ゲーム情報】
タイトル:『ブレイブダンジョン+魔神少女COMBAT』
発売元・開発元:INSIDE SYSTEM
対応ハード:Nintendo Switch
ジャンル:クロニクル2DRPG+オールスターカードバトル
価格:864円[税込]
関連リンク:
■ブレイブダンジョン+魔神少女COMBAT - INSIDE SYSTEM公式サイト
■マイニンテンドーストア:商品&購入ページ(Nintendo Switch)