この度のゴールデンゲームハンマー第5回は、少し趣を変え、有名所のゲームとしてNintendo Switchの『ロックマン クラシックスコレクション1+2』を紹介。
1987年にファミリーコンピュータ(ファミコン)にて産声をあげた後、30年以上に渡って続く長寿シリーズへと成長を遂げた、カプコンの代表的なアクションゲーム『ロックマン』のいわゆる”本家”、または”無印”とファンの間で呼称されるシリーズ全10作を一本のソフトにまとめた、オムニバスタイトルである。
元々はニンテンドー3DS、PlayStation 4、Xbox One、PC(Windows)にて、2016年に一作目から六作目を収録した第一弾が。翌2017年に七作目から十作目を収録した第二弾がPlayStation 4、Xbox One、PC(Windows)で発売された。
今回取り上げるのは、Nintendo Switch版。2018年5月24日に双方揃って発売された。ダウンロード版も発売されているが、いずれも他機種版同様に別売り。パッケージ版もゲームカードに収録されているのは第一弾のみで、第二弾は同梱されたプロダクトコードをニンテンドーeショップで入力し、ダウンロード版をNintendo Switch本体にインストールする方式になっている。とは言え、別売されているダウンロード版をそれぞれ単独で買うよりかは、パッケージ版を買った方が多少、お得な価格設定だ。
※なお、あらかじめ注意しておくと、パッケージ版のプロダクトコードは2020年5月25日で有効期限が切れる。できれば手元に残る形で、と考えているプレイヤーは、期限切れ前に確保しておくことを強くお薦めします。
あらためて、ロックマンというゲームを紹介すると、横スクロールのステージクリア型アクション。主人公のロックマンを操作し、行く手を阻む敵を「ロックバスター」なる射撃武器で倒し、様々な仕掛けを突破しながらステージ最後に待ち構えるボスの撃破を目指す、というのが基本的な流れだ。
ロックマンが他の横スクロールのアクションゲームと異なる点として、まず本編の構成。いわゆる、1から順番にステージを攻略していくのではなく、プレイヤーの好きな所から攻略していけるステージセレクトのシステムを採用した仕組みになっている。そのため、難易度の加減の付け方も、1から順番に攻略していくタイプと一味違い、プレイヤーの力量と判断次第で著しく上下する。
そして、難易度を意図的に下げられる要素がある。それが「特殊武器」。ステージ最後に待ち構えるボスを倒すと、ロックマンは「特殊武器」なる新たな装備を獲得。使用制限こそあるが、標準装備の「ロックバスター」とは別に、ボスが使っていた武器による攻撃ができるようになるのだ。これにより、ステージが進む度にロックマンが強くなっていく。
さらに武器には相性があって、それによる攻撃を苦手とするボスに使うことで、ロックバスター以上の大ダメージを与えられる。ハサミのボスには、岩のボスを倒した時に手に入れた武器を使う、と言った具合だ。このような武器が誰に有効なのかを推理・検証し、見事「答え」を見つけられれば、難しいと感じていた難易度が一転、大きく和らぐ。
これが、ロックマンというアクションゲームの持つ最大の特徴だ。裏を返せば、特殊武器がまだ何もない、初期段階は厳しい戦いを強いられる。しかし、そこを乗り越えることで、そのまま厳しい戦いを続けるか、楽にしていくかの選択肢が増える。遊ぶ度に攻略法が増えては広がる。そこもまた、ロックマンというゲームの持つ唯一無二の魅力だ。
本クラシックスコレクションは、そんな最初期から最新のロックマンを一気に遊べる内容になっている。先の通り、ファミコン時代で発売されたロックマン(1〜6)が『クラシックスコレクション1』に、次世代機で発売されたロックマン(7〜10)が『クラシックスコレクション2』に収録されている。
基本的に現行機に沿ったリメイクではなく、どの作品も原作そのまま。ただ、『クラシックスコレクション1』では好きなタイミングでセーブとロードができる(反則染みた)便利機能が、『クラシックスコレクション2』にはポイントごとに実施される中断セーブ、ロックマンの耐久力を底上げする「防御力アップモード」なるオプションが導入されていて、活用するか否かで厳しくも甘くもなる遊び方が楽しめる設計になっている。率直に言って、ロックマンは難しいことでもよく知られるゲームでもあるので、それを緩和できる機能を取り揃えている点で、シリーズ入門編にはこの上ない内容と言える。
後発のNintendo Switch版では、『クラシックスコレクション1』に「リワインド」なる機能が追加。いわゆる巻き戻し機能で、Lボタンを押すことで、ゲームが巻き戻される。これにより、穴に落ちたり、接触すると一発でロックマンがやられてしまうトゲに接触した時、件の機能を使うことで、その直前の所からすぐに再開できるようになった。セーブ&ロード機能でも同様のことはできるのだが、いずれも使うに当たってはメニュー画面を開く間を挟むので、その必要のない点でも利便性の高い機能になっている。
さらにこれも『クラシックスコレクション1』独自のもので、オプションにCPU設定を追加。「オリジナル」を選べば原作のファミコン版に準拠した処理落ちのある状態で、「ターボ」を選ぶことで現行機基準の処理落ちのない状態に変更できるようになった。
地味な機能だが、これによって難易度の塩梅が変わった旧作を遊べるように。特にシリーズ四作目から六作目は、その影響が顕著に現れるので、それぞれ試してみると違った手応えが得られるかもしれない。
そのほか、Nintendo Switch版で新規に追加されたものはない。特に『ロックマンクラシックスコレクション2』は他機種版とほぼ一緒だ。ただ、同第二弾は『クラシックスコレクション1』のように携帯機では発売されなかったので、外出先に持ち運んで遊べるようになった、というのは大きな変更点と言える。
◇既リリース済みの他機種版の強みを網羅した決定版
Nintendo Switch版は、先行した他機種版の持つ全ての特徴を取り入れた、決定版とも言えるバージョン。特に『クラシックスコレクション2』はニンテンドー3DS版が出なかったので、同ハードのように外出先で遊べるようになったのは大きな見所である。
『クラシックスコレクション1』のリワインドも主にシリーズが初めて、アクションゲームに苦手意識のあるプレイヤーには嬉しいと同時に、ネタ動画が作れるお遊び機能としての一面を持つのが面白い。実際に動画作成機能は二作共に実装されているので、何か面白い映像が作れたら、SNSにアップして共有してみるといいかもしれない。
◇日本語版も海外版も
Nintendo Switch版に限らないが、日本語版のみならず、海外版のロックマン(MEGAMAN)が遊べるオプションが実装されている。
特に注目なのが今なお、根強い人気を誇る『ロックマン2 Dr.ワイリーの謎』。同作はシリーズの中で最も完成度が高いと評される一方、難易度も屈指とシリーズファンの間では謳われている。だが、海外版には日本語版にはない、難易度選択機能が搭載されている。
その内の一つ、「ノーマルモード」は日本語版よりも低くした難易度に調整されており、初めてのプレイヤーには打ってつけの内容になっている。シリーズ初期の作品は、後期の作品ほどテキストもないので(特にストーリー関連は皆無)、英語が苦手というプレイヤーも気兼ねなく遊べる。
某動画サイトにおいて一時期話題を呼んだのもあって、ロックマン2は取り分け人気が高く、名も知られている。だが、難易度の高さでも有名で、一歩踏み出せない……のなら、ぜひ、この海外版を遊んでみていただきたい。本コレクション独自のセーブ&ロード機能、そしてリワインドも活用すれば、より気軽に人気作の真髄を知れるはずだ。
◇膨大なやり込み要素
これもまた、Nintendo Switch版に限らないが、シリーズ十作の本編とは別に特殊なシチュエーションを舞台とした「チャレンジ」が用意されている。似たようなモードは『ロックマン10 宇宙からの脅威!!』のほか、過去にはリメイクの『ロックマンロックマン』にも存在したが、本作では独立したモードの中に全10作をテーマにしたチャレンジを収録。数にして100を裕に越える物量に加え、それぞれクリアタイムに応じて三段階の評価が下されるので、非常にやり込み甲斐のある内容になっている。
特にオリジナルにも似たようなモードが存在する『ロックマン10』は、本作独自の新しいチャレンジも追加されていて、さらに遊び応えが増している。反面、単体ステージのタイムアタックが削除されているのだが、オンラインに対応したランキング機能はそのまま。他のプレイヤーと実力を争ったりする楽しみ方は健在だ。
また、『クラシックスコレクション1』に限定すれば、初代から六作目までをミックスしたチャレンジが楽しめるのも見所。残念ながら『クラシックスコレクション2』は作品間のシステム周りの違いなどが関係してなのか、用意されていないのだが、その分、物量で勝負した内容。一筋縄ではいかない難易度には、熟練のファンも唸ること請け合い。
◇実は大注目の一作『ロックマン8 メタルヒーローズ』
シリーズ十作の内で唯一、任天堂のゲーム機で遊べない作品でもあった『ロックマン8 メタルヒーローズ』。それがこのNintendo Switch版において、満を持して任天堂のゲーム機で遊べるようになった。
オリジナル版発売当時、任天堂のゲーム機で発売されないことに涙したプレイヤーにとって、これがどれほど意義深いものであるのかは想像に難くないだろう。涙したプレイヤーというのは筆者のことなのだが。当時、新作が発売されることを全く知らず、PlayStation、セガサターンではなく、NINTENDO64を選んでしまって、買いたいのに買えなかったあの悔しさと憎たらしさ、腹立たしさたるや、急な移行を決めたカプコンの制作スタッフ許すまじなぐらいに……って、私怨丸出し申し訳ございません。
(※ちなみに数十年後、PlayStation版を買って遊びました)
収録されているのはPlayStation版で、独自要素のあるセガサターン版でないという、少し惜しい所もあるのだが、任天堂のゲーム機で『ロックマン8』が遊べる。それだけでも、当時に悔しい思いをした世代は感慨深い気持ちに浸れるはずだ。また、現行機移植に伴い、ロード時間が消滅するなど、より快適に遊べるようになっているのも大きな見所である。
残念ながら、先述の『ロックマン8』が買えなかったプレイヤーへのお詫びの意図で制作された番外編で、もう一つの九作目と謳われる『ロックマン&フォルテ』は未収録。Nintendo Switch版においても、新規に追加されたようなことはない。
また、基本的に原作準拠の移植ではあるのだが、『クラシックスコレクション1』の『ロックマン6 史上最大の戦い!!』ではオープニングの曲が(何故か)海外版のものに差し替えられていたり、『クラシックスコレクション2』の四作は、ゲーム起動時にオープニングデモが飛ばされてしまう(※ただ、タイトル画面で数秒間放置すると、オープニングが見られる)など、オリジナル版を知るプレイヤーに違和感を抱かせる変更点もある。細かい所でも、リワインド機能はオプションで完全に切れないなど、不必要と感じるプレイヤーの欲求に応える配慮が図られてないのも気がかりではある。
ただ、全体的に移植度は高く、便利機能の存在もあって、これからロックマンというゲームを遊ぶに当たってはこの上ない一本。Nintendo Switch版は携帯モードで遊べる利便性の高さ、CPUオプションの追加もあって、決定版とも言える仕上がりになっている。1987年にファミコンで発売され、2011年のとある事件によって、シリーズが凍結状態に陥ってからも根強い人気を維持し、今なお、愛され続けているロックマン。その源流に本作を通じて触れてみるのはいかがだろうか。
なお、本コレクションには設定資料などを拝見できる「ギャラリー(ミュージアム)」も収録されているのだが、『ロックマンクラシックスコレクション2』の『ロックマン8』のミュージアムにおいて、奇妙な一枚が紛れ込んでいる。最新のNintendo Switch版でも、この一枚は削除されておらず、普通に閲覧可能だ。
これが意味するものとは……?(※第6回に続く!)
【ゲーム情報】
タイトル:『ロックマン クラシックスコレクション1+2』
発売元・開発元:カプコン / Digital Eclipse / バレット
対応ハード:Nintendo Switch
ジャンル:アクション
価格:4,990円[税別](パッケージ版) / 各2,769円[税込](ダウンロード版:個別販売)
関連リンク:
■マイニンテンドーストア:商品&購入ページ(ロックマン クラシックスコレクション)
■マイニンテンドーストア:商品&購入ページ(ロックマン クラシックスコレクション2)
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