いま話題の「女性ヒーロー映画」といえば……そう! 『映画プリキュアミラクルユニバース』です! という訳で、公開初日の今日、さっそく本作を鑑賞してきました。
■『映画プリキュアミラクルユニバース』作品概要
春と秋、計2作ずつ映画が公開されることが毎年恒例となっている「プリキュア」シリーズ。基本的に春映画は現行作と過去作のプリキュアが協力し合って活躍する“オールスターもの”、秋映画は現行作単独の劇場版となっています(昨年の秋映画『映画HUGっと!プリキュア♡ふたりはプリキュア オールスターズメモリーズ』がオールスターものだったのは例外中の例外)。最新作『映画プリキュアミラクルユニバース』は現行のプリキュアシリーズ最新作『スター☆トゥインクルプリキュア』と、前作『HUGっと!プリキュア』、前々作『キラキラ☆プリキュアアラモード』の3作に登場する総勢15名のプリキュアがコラボレーション。無限の可能性が広がる宇宙を舞台に、プリキュア映画では来場者特典としておなじみ“ミラクルライトの秘密”をめぐる大冒険が繰り広げられます。
ゲスト声優にはお笑いコンビ「爆笑問題」の田中裕二さん、『進撃の巨人』のエレン・イエーガー役などでおなじみの声優・梶裕貴さん、『妖怪ウォッチ』のジバニャン役などの声優・小桜エツコさん、ゴー☆ジャスさん、脳みそ夫さんらが名を連ねています。
■シュールな絵面や謎なストーリー展開……どのプリキュア映画とも異なる異様な仕上がり
まず最初にお伝えしておきたいのは、本作が昨年の『オールスターズメモリーズ』のような、大人でも熱くなれ、感動できる方向性のプリキュア映画ではないということです。ストーリー展開やキャラクター間のやりとりからは、綿密なプロットによるエモーションの積み重ねのようなものはあまり感じられませんでした。かといって『映画キラキラ☆プリキュアアラモード パリッと!想い出のミルフィーユ!』のような突き抜けた愉快さのあるコメディ路線とも明らかに異なっています。頭に“?”が浮かびながらもなんとなく納得させられながら話が進んでいくストーリー、必要以上に絡み合いながら戦うキュアマカロンとキュアショコラなど、可笑しさを狙っているのか素でカッコいいと思っているのかちょっと読めないシュールなカットの数々……。後年、「プリキュア映画屈指の怪作」と呼ばれても不思議ではない奇妙な感触を受ける仕上がりが、『映画プリキュアミラクルユニバース』の特徴です。
物語は「見習いのミラクルライト職人」であるヒヨコのような妖精“ピトン”を軸に展開されます。ピトンは自分を一人前の職人と思い込んでいますが、実際のところつくったミラクルライトはまだまだ不出来なもの。これを指摘されても、自分の非は認めようとしません。ミラクルライトの工場に異変が起き、助けに来たプリキュアが返り討ちに会った際も、何もできない自分のことは棚に上げ、プリキュアたちをなじるような言動を繰り返します。そして驚いたのは、彼が自身のこれまでの考え方を悔い改めるような“成長”を表す場面がハッキリとは描かれないこと。一方でピトンを受け入れ、彼の行動を肯定する『スター☆トゥインクルプリキュア(スタプリ)』の主人公、キュアスター/星奈ひかるの優しさは魅力的に描かれます。ともすれば「説教っぽい」と感じられるメッセージの多いプリキュアシリーズではある意味画期的と言えるでしょう。
そんなプリキュア映画としては異質なつくりの本作ですが、3世代のプリキュアが協力して戦うシーンはやはり熱い。ここ数年の春映画は歴代プリキュアが総登場する「オールスター制」を廃し、直近3作のプリキュアに絞ったコラボレーションになっているため、『キラキラ☆プリキュアアラモード(プリアラ)』の6人が春映画に登場するのは恐らく本作が最後。また、最終回で12年先の未来までが描かれた『HUGっと!プリキュア』の5人の以前と変わらぬ姿をいま一度拝めるこの機会は、ファンとしては見逃せません。「プリアラ」の6人と共にお菓子作りに挑戦する「スタプリ」の羽衣ララのパティシエ姿や、『オールスターズメモリーズ』に引き続き笑わせてくれるルールー・アムールのアンドロイドネタなどは個人的に本作のハイライトでした。
そのほか、プリキュアファンならばきっと喜べるささやかなサプライズも用意されています。また、ゲスト声優である梶裕貴さんの熱演も大変素晴らしく、本作終盤がきっちり緊張感の漂うものになっていたのは梶さんの功績が大きかったかと思います。
情操教育的な側面も求められがちな「プリキュア」シリーズですが、プリキュアたちのカッコよさ、可愛さ自体も当然シリーズの大きな魅力です。たまには肩ひじ張らずに彼女たちの魅力を楽しめる映画があってもよいでしょう。『映画プリキュアミラクルユニバース』はプリキュアファンにとって、そんなちょっとした息抜きにちょうど良い作品かもしれません。シュールさ、掴みどころの無さはかなり濃い口ですが、なかなかここまでのものは出てこないと思うので、せっかくなのでまたとない機会を楽しみましょう!
もし映画版からプリキュアへの入門を考えている方がいらっしゃいましたら、昨年の『オールスターズメモリーズ』や、身近にいるプリキュアファンのおすすめ作品から履修することをおすすめします。
■『映画プリキュアミラクルユニバース』はこんな方にオススメ!
・ここ3~5年のプリキュアのファン
・キュアホイップやキュアエールたちの活躍をもうちょっと観たい方
・細かいことは気にせずシュールな世界観、展開を楽しめる方
・情操教育的、感動的なメッセージ性抜きでプリキュアを楽しみたい方
・梶裕貴さんのファン
■『映画プリキュアミラクルユニバース』ミラクルライトレクチャー
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