世の中には「プレミアゲーム」、もしくは「レアゲーム」なるものが存在する。
文字通り、稀少価値が付いたゲームのことだ。
間違っても、後者はイギリスの某ゲーム開発会社制作のゲームのことではないぞ。
だが、昨今はダウンロード販売の定着で、そのようなゲームの復刻・リメイクも行われ、手頃な価格で買えるようになってきている。今回取り上げる『WILD GUNS Reloaded(ワイルドガンズ リローデッド)』もそんな1本だ。
本作のオリジナルに当たる『WILD GUNS(ワイルドガンズ)』は、1994年8月12日に発売されたスーパーファミコン用ゲームソフト。『東方見文録』、『アイドル八犬伝』などを作ったことで知られるナツメ(現:ナツメアタリ)制作のガンシューティングアクションゲームだ。プレイヤーキャラと照準2つを同時に動かす独特のゲームシステムと操作スタイル、「SF西部劇」とも言えるマカロニウェスタンとSFがコラボレーションした独特すぎる世界観を特徴とし、特にコアなプレイヤーから高い評価を獲得した。
しかし、肝心のゲームが市場に出回った本数は非常に少なかった。その数は不明だが、2020年現在、中古の箱説明書付きの完品が税込58,000円、カセット単品でも税込24,100円であることからも、いかに稀少なゲームだったかが嫌でもお分かりになるだろう。(※いずれの金額はインターネット通販サイト「駿河屋」より引用)
ゆえに年数が経過した後にゲームのことを知っても、そのあまりの金額から手を出しにくい1本だった。バーチャルコンソールでの配信もなかったので尚更だ(※だが、なぜか海外では配信されていた)。かくいう筆者も知るのが遅かったクチで、様々な意味で目から血の涙が流れ出る日々を送った。
前置きが長くなったが、そんな現状を打破すべく誕生したのが本作「リローデッド」である。2016年12月13日にPlayStation 4用ダウンロードソフトとして発売された。お値段は税込1,834円。断じて5桁ではない!
また、2017年7月12日にPC(Windows)版、2018年4月19日にはNintendo Switch版もリリースされている。もちろん、価格は5桁ではない。いずれも税込み1,800円である。いやはや、実に素晴らしい時代になった。血の涙を流した筆者も欣喜雀躍の思いである。
肝心の内容はオリジナル版と変わらない。プレイヤー(自機)を照準の2つを動かし、銃を撃ちながら敵を倒していくガンシューティングアクションゲームだ。ステージクリア方式で展開し、幾つかのシーンごとに用意された戦闘を規定時間内戦い抜き、最後に現れるボスを倒せばクリアになる。敵の攻撃を1回でも受けてしまうとミス。残機が0になればゲームオーバーだ。
それらの仕組みから、ゲームとしては難易度高めの部類に属する。特にプレイヤーの操作方法は独特で、銃を撃ち続けている場合は照準が動き、銃を撃っていない時は照準が動かず、自機が動く仕組みになっている。また、銃を撃ち続けている時に(PS4版の場合)×ボタンと方向キー左右のどちらを同時に押すとローリング。指定した方向に高速移動する。この間、一瞬だけ無敵時間が発生するようになっていて、タイミングが合えば、敵の攻撃に重なっても無傷で潜り抜けられる。
また、敵の攻撃にこちらの攻撃が当たれば相殺して消すことも可能。消す度に画面下の緑色のゲージが溜まっていき、一定量に達するとガトリング砲が発動!一定時間、無敵状態になって敵に強力な一撃を加えられるようになる。
ほかにもその場から飛び上がるジャンプ(ジャンプ中にもういちどボタンを押すと2段ジャンプに)、対象の敵を一定時間鈍くする「投げ縄」などのアクションがあるほか、銃による攻撃も敵が落としたアイテムを撃ち落とすと、それに応じた有限式の攻撃に変化する。これらのアクションを駆使し、ステージで敵から物まで徹底的に破壊しつくす戦いに挑む。以上が本作の大体のあらましだ。単純明快ではあるが、システム周りの特徴もあって独特の癖を持つ仕上がりになっている。
なお、本「リローデッド」は最新のゲーム機への移植に合わせ、画面比率が16:9のワイドサイズに変更。グラフィックもスーパーファミコン版のテイストだが、細かい部分が描き直されて一新されている。さらに主人公の「クリント」、ヒロインの「アニー」に続く新キャラクター「ドリス」と「バレット」、難易度NORMAL以上限定で新ステージ2つを追加。ローカル限定だが、4人同時プレイモードにオンライン対応のスコアランキングなどの新機能も搭載されている。
しかも、驚くべきことに本作はオリジナル版当時、20年前のベテランスタッフ3名(2018年時点で平均年齢50歳!)のスペシャル開発チーム「TENGO PROJECT」によって制作されている。この手の昔のゲームのリメイク作品では、制作側が一新されたり、誰かしら欠けてしまうのがありがちだが、誰ひとり欠けず、当時のまま。その点でも非常に珍しい作品となっている。
単刀直入に言うが、本作の操作は難しい。かなり難しい。
何せ、プレイヤーと照準の2つを動かすのだ。しかも、射撃している間は照準だけが動かせ、射撃していない時は自機と照準が同時に動かせる反応の違いがあり、最初はこの特徴が掴めず四苦八苦すること確実。
ぶっちゃけ、始めて間もない頃はステージ1すらクリアできないだろう。しかも、本作にはチュートリアルも何もない。いきなり本編開始の「習うより慣れろ」スタイルなのだ。おもてなす気全くなし!
だが、何度かプレイを重ねると双方の使い分けが分かってくる。特に敵弾の着弾地点表示とこちらの弾を当てての相殺(消す)、ジャンプして攻撃回避と合わせて照準の位置を一瞬固定させる、全体攻撃の「ボム」の積極的な活用を心がけることで、徐々にスムーズな立ち回りができるようになっていく。
そして、いずれは最初のミス連発が懐かしい思い出になってしまうほどの安定した攻撃が展開できるように。ハードルは高いが、努力すれば相応の動かす楽しさと達成感を提供する、考え抜かれた設計になっているのだ。
それでも難しい事実は覆せないが、やり込むほどに自分が上手くなっていく快感は格別。意外に使うボタンも少なくて取っ付きやすいのも極め甲斐を高めており、単に難しいだけではない底の深い魅力を感じること請け合いだ。
難易度も上達を実感させてくれるバランスにまとまっている。先も触れたが、本作は難しい。ゲーム開始前に「EASY」から「HARD」の3段階の難易度が選べるが、一番簡単な「EASY」でも手加減無用の手ごわさ。ステージ途中に登場する中ボス、最後に対峙するボスも初見殺しな攻撃を仕掛けてくることが多々あって、手を焼くこと間違いなしだ。
ただ、きちんと状況を見極め、ボムを活用したり、時に移動とジャンプの活用、敵弾の相殺を心がけると、突破できることが多い。また、先手必勝が最適解の場面も結構あり、再挑戦の度にそれを意識して立ち回っていけば、安定性も大幅に増す。
まさにトライ&エラーの醍醐味を詰め込んだ調整。これぞアクションゲーム、そして昔ながらのアーケードゲームと言わんばかりの手応えが堪能できるのだ。何より全ステージ、最適な手段を用いればノーミスクリア達成可能に設計されているだけでも、本作がいかに緻密なバランス調整を施しているのかを実感させられるはずだ。
けど、いきなり厳しいのは……と、尻込みするのも事実。そこはご安心いただきたい。後発のNintendo Switch版限定だが、ゲームオーバーが存在しない、より簡単な「BEGINNER」が用意されている。もし、クリア優先で気軽に楽しみたい気持ちがあるなら、Nintendo Switch版を選ぶのがおすすめだ。
ただし、余裕でノーミスクリアできるほどに手加減した難易度ではないのでご注意を。
各ステージには敵以外にも様々な物(オブジェクト)が配置されているのだが、基本的にどれも撃って壊せるよう作られていて、その度に派手な爆炎と破壊音が鳴り響き、対象のグラフィックも相応のものへと変化する作りになっている。壊せばパワーアップアイテム、追加のボムが出現することも多く、積極的に狙っていけばいくほど展開が有利になるメリットも。
何より、この破壊表現全てがドット絵で細かく描かれているのが圧巻。しかも、破壊できない壁にも弾痕が残ったりと、遊んでいる際にプレイヤーがまず気付かないような所もきちんと表現されているのだ。
全体的に敵の攻撃が激しいので、そちらへの対応に集中しがちな本作だが、それ以外に関してもちゃんと攻撃した時の反応が返ってくる。地味な部分ではあるが、プレイヤーが好き放題暴れたなりの結果が目に見えて現れることを大事にした作りには、これぞゲームの醍醐味と言わんばかりの嬉しさと気持ちよさを感じてしまうだろう。
破壊表現を事細かに描いたグラフィックの仕上がりも非常に良い。見た目はオリジナルであるスーパーファミコン版のグラフィックを流用した感じなのだが、実は全部新規に作り直されたもの。よく見てみると背景に新しい物が追加されているなど、細かい部分で違いが現れているのだ。しかも、スーパーファミコン以上の性能を持つゲーム機で出しているのに、色数はそれに準拠!
新たに追加されたステージすら、それで統一した仕上がりになっている。
さらに恐ろしいのが、背景からキャラクターまで全てのグラフィックをたったひとりのスタッフが描いていることである(※実際にエンディングのスタッフクレジットに記されている)。もちろん、オリジナルのスーパーファミコン版にも携わった当時の御方。
「ベテラン、恐るべし」の一言だ。
グラフィックのみならず、音楽もデフォルトのアレンジ版以外にスーパーファミコン版の楽曲に切り替えるオプション「ノスタルジックサウンド」を搭載し、新ステージ用にそのアレンジも用意する徹底ぶりとなっている。楽曲も各戦闘を盛り上げる熱く、時に哀愁も感じさせるものばかりで強烈な印象を残す。特に達成感と哀愁を漂わせたエンディングの曲は筆者個人としてはイチオシなので、ぜひチェックいただきたいところだ。
なお、「ノスタルジックサウンド」はゲーム本編を難易度EASY以上でノーコンティニュークリアしないと使えないものなので要注意。
また、最大2~4人まで楽しめるマルチプレイも熱い。特に共有式の残機システムが演出する共闘感は格別で、シングルプレイ時では体験できない緊張感と仲間と共に困難を戦い抜く面白さが味わえる。もし周囲に気の合う友人がいればお試しがてら、プレイいただきたいところだ。思わぬ熱さに夢中になってしまうことをお約束する。
魅力は多くも、ハードルの高いゲームなのは否定しない。
だが、それを乗り越えるだけの魅力が詰まっていて、高いやり応えと満足感を提供してくれる傑作に完成されている。オリジナルのスーパーファミコン版は手が出しにくいが、こちらは価格も手ごろ、しかも当時の制作陣によるリメイクなので、基本的な面白さと醍醐味も損なわれていない。当時、隠れた傑作とまで言われた伝説的なアクションシューティングを挑戦してみよう。今なら、難易度「BEGINNER」のほか、「BOSS RUSH」などの新モードも楽しめるNintendo Switch版が特におすすめ。あえて正面からぶつかり合う気持ちがあれば、PlayStation 4版、或いはPC版をどうぞ。
いざ行かん、未来の荒野へ!
【ゲーム情報】
タイトル:『WILD GUNS Reloaded(ワイルドガンズ・リローデッド)』
発売元・開発元:ナツメアタリ
対応ハード:PlayStation 4、PC、Nintendo Switch
ジャンル:ガンシューティング・アクション
価格:1,834円[税込](PlayStation 4)、1,800円[税込](Nintendo Switch)、1,450円[税込](PC)
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