エビ、カニ、ヤドカリやサンショウウオ、イモリ、カエル等のうんちくWiki「Decapedia」の中の人が身近な生き物について抜粋して紹介する特集コーナー。第4回は他のどのカエルより繁殖期の早い「ヤマアカガエル (Rana ornativentris)」です。
今回はちょっと潮干狩からは離れて、キャンプ場の水場などでよく見られるヤマアカガエルをご紹介。「身近か?」と聞かれるとちょっと微妙ですが、そりゃ街中では見られませんけど山行きゃ普通にいるので身近です(キリッ)
ヤマアカガエルは本州、四国、九州の山間部に棲息します。体色は地味で、概ねは目立たない灰色か褐色ですが、時にオレンジ色が強く出る美しい個体もいます。後肢には横縞が入ります。同じ地域の平地から低山地にかけては近縁のニホンアカガエル(Rana japonica)が、北海道にはエゾアカガエル(Rana pirica)が、沖縄にはリュウキュウアカガエル(Rana ulma)が棲息しています。対馬にはツシマアカガエル(Rana tsushimensis)と、かつてはツシマヤマアカガエルとされていたチョウセンヤマアカガエル(Rana dybowskii)がいるそうです。
我国のアカガエルを代表するニホンアカガエルは、かつては身近なカエルだったのですが、平地部の沼池や湿田周辺を住処とするために、近代以降の圃場整備や宅地開発と共に姿を消しつつあります。それに引き換え、ヤマアカガエルは山間部を住処とするため、まだ細々と命脈を保っている様で、里山の棚田や湿地、郊外の野外活動施設のちょっとした水たまり等でも普通に見られます。
ヤマアカガエル、ニホンアカガエル、タゴガエル(Rana tagoi)の3種はとてもよく似ていて、時に棲息地域が重なるため見分けるのが難しいです。
背側線(鼻先からお尻辺りにかけて通る2本の線)が真っ直ぐなのがニホンアカガエルで、ヤマアカガエルは眼の後ろで大きく外側に膨らんでから内側に切れ込むため、まだ見分けやすいのですが、ヤマアカガエルとタゴガエルは背側線では見分けがつかない上、生息域も同じ様な環境なので、パッと見ではなかなか見分けが付きません。裏返して腹側を見ると、ヤマアカガエルは下顎から喉にかけて大きな黒い斑点があるのに対し、タゴガエルは下顎から喉にかけて小さい黒い斑点が散在する程度なので(ちなみにニホンアカガエルの腹は白一色)ようやく見分けがつきますが、捕まえて裏返さないと判明しないため、野外で見分けるのは大変です。
タゴガエルはどちらかと言うと林床の落ち葉の陰などにいて、体型が少しズングリムックリ。ヤマアカガエルは水場からあまり離れることはなく、体型がスマート。というわずかな違いで感覚的に判断できるかもしれません。
冬季、ヤマアカガエルは土中ではなく水中で、泥や堆積した落ち葉の中で冬眠します。繁殖期は1~4月ぐらいまで。2月頃が最盛期で、一度冬眠から目覚めて繁殖活動を行ったあと、再度冬眠する珍しい習性を持っています。産卵は、厳冬期の夜に雪解け水の溜まった田圃やその周辺の水たまりで行われることが多く孵化までの期間が長いため、孵化前に水が干上がってしまったり、時には凍結して全滅してしまうこともありますが、そのリスクを犯してまで冬に産卵するのは、天敵から自分たちや子孫を守れる可能性が高いためだと思われます。
3~4月頃に孵化したオタマジャクシは6月頃には小さなヤマアカガエルとなって上陸し、2年程度で繁殖可能な成体となります。
前述した様に、ニホンアカガエルとは違い、ヤマアカガエルはいまのところは絶滅の危機から遠いものの、最近では山間部にまで天敵であるアメリカザリガニやウシガエルの侵入が見られるため、近い将来、絶滅する地域が増えるかもしれません。
外来種、移入種の誤放流や放逐は厳に慎んでほしいものですね。
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田んぼで捕まえたトノサマガエルなどを飼うのと同様、飼育はそれほど難しくありません。但し、基本的に動くものしか食べませんので餌やりは大変です。
プラケースに2センチぐらい底砂を敷きます。細かい砂の方が良いのですが管理が大変なので、ゴマ粒大ぐらいで大丈夫。大磯砂でも熱帯魚用のセラミックサンドでも川砂でもでも何でも大丈夫です。陸地にはあまり上がりませんが、アク抜き済みの流木等で陸地を作ってあげましょう。
エアポンプで空気を送ってやります。ホースの先はエアストーンでも良いのですが、水作等の投げ込み式のフィルターに繋ぐのも有効です。エアポンプや水作もペットショップやAmazonで入手可能。
※水槽は電化製品やコンセントタップの近くに置くのは止めましょう。また、エアポンプのコンセントタップは飼育ケースよりも高い場所に置き、コンセントタップに直接水が垂れない様にします。
餌は3日に1回ぐらいで大丈夫。動くものしか食べませんので、夏場は草むらでイナゴやバッタなどを必死で捕まえましょう。冬場は室内飼いの場合、冬眠しませんので2週間に1回程度の餌やりが必要です。ペットショップ等でコオロギが売っているので、それをやってください。慣れると死んだ虫等をピンセットで動かすと食べるようになることもあります。
水は季節によりますが、臭いがするようなら換えてください。肺呼吸ですのでそれほど神経質になる必要はありません。
基本的に餌やり以外にはそれほど難易度は高くありません。ただ皮膚は弱いのであまり触らないようにしてください。変温動物の体温は低く、恒温動物である人間の手で触れると火傷のような状態になることがあります。また、カエルの仲間は皮膚から抗菌作用のある化学物質を分泌しているので、カエルを触った手を洗わずに口や目を触ると炎症を起こすことがありますので、人間の方も要注意です。
ちなみに、オタマジャクシは雑食で何でも食べますので、池から拾ってきた枯れ葉などを水中に入れておき(インフゾリア=ゾウリムシなどが湧きます)、時々メダカの餌などを与えると良いでしょう。小型のカエルになって上陸すると生き餌が必要ですので、ショウジョウバエや小さなワラジムシ、コオロギの幼虫などを与えてください。
餌やりが大変なので、そのうちに飼うのが面倒になるかもしれませんが、一度飼育環境に入れたカエルは絶対に野外に放さないでください。
飼育環境に置いたカエルは、飼い主によってペットショップ等からカエルツボカビやその他の未知のウイルス等を持ち込まれ、知らない間に感染させられている可能性が高いのです。その様な個体を野外に放すと、野生動物の大量絶滅の原因になってしまうかもしれません。
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