エビ、カニ、ヤドカリやサンショウウオ、イモリ、カエル等のうんちくWiki「Decapedia」の中の人が身近な生き物について抜粋して紹介する特集コーナー。第2回は泥干潟でよく見られるカニ「ヤマトオサガニ (Macrophthalmus japonicus)」です。
我国では青森県以南の河口の泥干潟に棲息しています。砂干潟でもたまに姿を見ることがありますが、同属のオサガニと見分けるのはかなり難しいです。紀伊半島以南ではヤマトオサガニとよく似たヒメヤマトオサガニも棲息し、どれも泥や砂をかぶっている上、近づいて観察するのが難しいカニなので、見分けるのは難しいでしょう。
トップの写真の個体は、東京湾の泥干潟で撮影したもので、分布域からヤマトオサガニと判断しました。というか画像が粗くてすみません。底なし沼のような泥干潟の上、近づくと素早く泥の中に逃げ込むのでもスマホでは限界でした。バードウォッチャーが持ってるバズーカみたいな望遠レンズ付きの一眼レフ持っていれば遠くからでも鮮明に撮れたのでしょうが、鳥好きと違って(下ばっかり見てるからでしょうか)カニ好きは高いもの買う余裕ないんですよね・・・。(あくまでも筆者のケースです)
ヤマトオサガニは、Macrophthalmus japonicusという学名から分かるように、日本の干潟を代表するカニで、突き出た眼柄と横長の甲部が特徴。砂泥底の干潟の泥中に潜み、潮が引くと歩きまわり泥中のデトリタスを器用につまんで食べています。潮干狩りをする様な場所に生息し、干潮時には動き回っているのですが、人や鳥が近づくと素早く泥に潜るので、潮干狩りの最中にハッキリと目にすることはあまりありません。ただ、潮干狩りをしている人を見ていると、その周囲を動き回っているヤマトオサガニを大量に見ることができます。
干潟にできた潮溜まりの近くで活動し、天敵が近づくと潮溜まりに逃げ、更に泥の中に潜って逃げます。見た目はシオマネキに成り損ねたシオマネキといった風貌ですが、シオマネキとは違い両鉗脚(はさみあし)は同じ大きさです。オスの鉗脚は長く大きいが稼働指部分(指節=いわゆるハサミの部分)は短く、泥中のデトリタス(微生物の死骸などの微細な有機物)をつまんで食べるのに適しています。
シオマネキと同じように鉗脚を使ってウェービング(ハサミを振り上げてメスにアピール)を行いますが、オサガニの仲間は両鉗脚を振り上げます。
人とっては利用価値もあまりないカニですが、シギやチドリ、コアジサシなどの渡り鳥にとっては貴重な栄養源になっています。
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干潟の生き物を飼育するのはとても難しいです。泥に溜まった有機物を分解するには干潟の微生物の働きが必要ですが、それを水槽などで再現するのはまず不可能です。また、潮の満ち引きといった大きな水の動きを再現できない水槽では、砂や泥を厚く敷くとどうしても嫌気域ができ硫化水素が発生します。高性能な濾過装置を使ったとしてもこれを解消するのは難しいです。
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