画面を直接触る。
なぞるように指や手に持ったペンを動かす。
2004年に発売された携帯ゲーム機『ニンテンドーDS』のヒット、スマートフォン・タブレットと言ったデバイスの急速な普及により、今や「タッチ系操作」は、ゲームにおいても定番のものになった。
DSの頃から辿って、タッチ系操作だけで遊ぶ個性的な作品も多く発売された。そして、もう少し注目されても、と言いたくなるゴールデンハンマーなものも一部、見受けられた。
今回はそのような作品の中から、自信を持って傑作と豪語できる一本を紹介する。
『Severed(セヴァード)』だ。
本作はカナダのインディーゲームスタジオ「Drinkbox Studios」制作による斬撃アクションRPG。2016年4月26日、海外先行でPlayStation Vita用ダウンロードソフトとして発売された。その約3ヶ月後、7月28日にはiOS用ゲームアプリとしても配信。
日本はiOS版が先行し、PlayStation Vita版は同年10月6日に配信された。またその後、Wii Uとニンテンドー3DSにも移植。後者は日本でもPS Vita版の約2ヶ月後、12月28日にフライハイワークスより配信された。
2017年8月8日には、Nintendo Switch版も誕生。
日本は2年遅れの2019年7月25日より、配信が始まった。
その経歴の通りだが、様々なハードに移植されたゲームである。
そして、タッチ系操作で遊ぶプレイスタイルを最大の特徴としている。
内容の紹介に入っていこう。
基本的には一人称(主観)視点で展開するアクションRPGだ。画面構成は『ウィザードリィ』、『世界樹の迷宮』などに象徴される3DダンジョンRPGスタイルで、移動も1歩ずつ進んでいくという仕組みになっている。
ただ、パーティ編成のシステムはなし。基本、一人旅だ。
さらに敵との戦闘はマップを進んでいく時に現れる「シンボル」に触れると発生。倒すと消滅し、2度と戦えなくなる一期一会方式になっている。
そのため、感覚的にはRPGというより、アクションゲームに近い。
戦闘もバリバリのアクション。
目の前の敵を直接なぞって(スワイプして)、ズバズバ斬っていく、タッチ操作にフォーカスしたものになっているのだ。なので戦闘中、プレイヤーは画面をなぞって斬りまくることに集中する形となる。
だが、言うまでもなく敵もその場で仁王立ちしたままではない。
攻撃を続けると防御したり、
画面下の敵の体力ゲージ周囲にある「黄色いゲージ」が満タンになれば、攻撃してくる。直撃すれば、もちろんこちら側がダメージを受ける。
だが、攻撃が来る方向に合わせ、斬り返すようスワイプすれば、行動をキャンセルして怯ませることができるのだ。そのため、きちんと対処していけば、ノーダメージでの撃破も夢じゃない。そんな面白く、心揺さぶる立ち回りができるようになっている。
さらに敵に攻撃を当てていくと、画面左上に表示される「フォーカスメーター」が上昇。
これが満タンになった時、敵に止めを刺すと、
「切断モード」が発動。
制限時間内に指定された部位を斬れば……
ステータス強化に必要なリソースアイテムこと「四肢」を入手できるのだ。本作は、これを使って攻撃力の強化、「スキル」の習得を行っていく。なんとも不気味な設定だが、多くの「四肢」を手に入れることができれば、その分、強化を早められるメリットがあるので、ついつい積極的に挑戦したくなる魅力がある。
見事、全ての四肢を斬り落とせた時も強烈な達成感が。そして、さらなる戦闘を求めて進めたくなってしまうのだ。こんな「クイックタイムイベント(QTE)」的な要素もあり、一筋縄ではいかない手ごわさも表現している。
他にもゲームが進むと、「ブラインドアイ(目くらまし)」を始めとする特殊技も追加され、それに応じた多彩な戦術を駆使できるように。このように、タッチスクリーンフル活用の「斬撃アクションRPG」の名に恥じぬ、圧倒的な爽快感と慌ただしさ、そして操作の楽しさが異彩を放つ作品になっている。
見た目がダンジョンRPGなので、それっぽいゲームを想像するかもしれないが、実際はビックリするほど慌ただしいザ・アクションゲーム。操作もコントロールスティックとタッチ以外使わない徹底ぶりで、強烈な個性を解き放っている。
そんな本作最大の魅力は、スワイプ操作で敵を斬りまくる戦闘だ。
タッチスクリーンに指を添え、敵を斬って斬って斬りまくる。
攻撃が来たら、逆方向にスワイプして弾き返す。
トドメを刺したら、強化に必要な四肢をもぎ取る。
この一連の流れが半端なく爽快。攻撃の反応もスピーディで、ヒット時に鳴り響く質感抜群の効果音も相まって、極上の爽快感と高揚感を提供する。
ゲームが進むにつれ、攻撃手段が増えて多彩な戦術が可能になっていくのもプレイヤーを飽きさせない。敵もバリエーション豊か。スタンダードな打撃で攻めてくる者から分裂型など、一筋縄ではいかない面子が続々と行く手を阻む。
時には複数体の敵を相手にする場面もあって、その際は誰が攻撃してくるかをきちんと見極め、対処していかなければならない、マルチタスクな忙しさと驚異的な緊張感を堪能できる。そして見事、被害を最小限に抑えて倒せた時の達成感たるや……言葉に表しがたい。
スワイプで敵を斬る操作自体は率直なところ、ありきたりだ。
しかし、本作はレスポンスから演出、ゲーム展開に応じた趣向を凝らし、極限にまで造り込んだものに仕上げている。そして、アクションゲームの真骨頂にして醍醐味「動かすだけでも楽しい」を全編に渡って味わえるものにしているのだ。
多くは言わない。ぜひ、1回でも体験いただきたい。瞬く間に本作の凄さが身体の全身に響き渡って、戦いを欲するようになるはずだ。
難易度も絶妙。そもそも、ほぼ全ての戦闘でノーダメージ撃破が狙えるようにされているだけでも、その練り込み具合をお察しいただけると思う。
特にその魅力が顕著に現れているのがボス戦だ。
本編はエリアごとに設けられた土地、ダンジョンを探索しながら進めていく構成で、その締めにボスとの戦いが用意されている。率直に言って、非常に手ごわい。道中で戦う敵とは性質の異なる、トリッキーな攻撃で襲い掛かってくる。
しかし、攻撃が行われるタイミング、順番などのパターンを見切れば、被害を最小限に抑えて倒せるように設定されている。最後のボスですら、だ。
さらに不意打ちも一切なし。画面下の「黄色いゲージ」が溜まった時に発動する仕組みから逸脱する行動は起こさないので、常に公平な攻防が繰り広げられるのだ。
ボスに限らないが、敵に敗北した際も直前からやり直しと、プレイヤーに手間と負担を与えない、昨今のゲームらしい配慮も施されているので、リトライも苦ではない。
敵との攻防を繰り広げる緊張感とそれを打ち倒す快感。
そして、そこを集中的に味わってもらうように余計な負担はかけさせない。
この見事なまとめ具合には、ゲーム好きほど唸るほどの感動を覚えること間違いなしだ。
戦闘のことばかり語ってきたが、探索周りも面白いものに仕上がっている。特に謎解きが見事。複雑なパズル、謎かけのようなものは控え目、少し頭を捻れば答えに辿り着けるもの中心という、程好い難易度でまとめられている。
仕掛けのバリエーションも豊富。毒ガス吹き荒れる空間、昼夜の変化に応じて開閉される扉、落とし穴など、色々なものが立ちはばかってはプレイヤーを翻弄する。
探索中心のアクション、RPGが好きなら、このバランスの取れた仕上がりには心の底から「分かっている」と言いたくなってしまうこと間違いなし。
また、ステータスアップに繋がるアイテムを探す遊びが用意されているところには、任天堂の『ゼルダの伝説』が脳裏を過ぎってしまうかもしれない。
……いや、どうあがいても想像することになるのだが。
何故ならアイテムの名前、「ハートのかけら」ですので。
(このほか「ブレインのかけら」なるものもある)
敵を斬り刻む、四肢をもぎ取り、それでプレイヤーを強化するなどからは、残酷さを感じてしまうだろう。実際、剣で斬るたび、血がブシャブシャ吹き出る程度に演出面は過激。ごく一部、ホラー全開なイベントもある。
だが、生々しさは一切ない。スクリーンショットの通りだが、背景からキャラクターに至るまでのデザインの独特さもあって、残酷だけども嫌悪感を抱かせないビジュアルになっている。むしろ、美しさすら感じる仕上がりなのだ。
エリアごとのロケーションも美しく、どこか妖しさに満ちたデザインで強く印象に残る。スクリーンショットを撮りたくなる場面もあって、見ているだけでも楽しい気持ちになること請け合いだ。
後に回ったが、愛する家族と片腕を失った少女「サーシャ」が異世界を旅するストーリーも謎めいた内容だ。魔物に捕まったとされる母親、父親、弟を探し、助けるのが主な目的となるのだが……その先には、思わず言葉を失う凄惨な展開が待っている。そして、世界を探索していくにつれ、サーシャは徐々に魔物同然の姿へと変わっていく。
全ての目的を成し遂げた後、彼女にどんな運命が訪れるのか。これ以上はゲームを遊んで確かめていただきたい。まさかの結末に心打たれるだろう。
後半、強化措置が施された敵との戦闘が中心になったり、ワープポイントがほぼ無くてアイテム回収のやり込みが面倒など、難点もそれなりにある。ボリュームもエンディングまで5〜7時間ぐらいなので、長編を求めると肩透かしだ。
しかし、そんなのが些細に感じてしまうほど、強烈な魅力を秘めたアクションRPGに完成されている。もう、多くは語らない。すぐにでも遊ぶべし。これは正真正銘の傑作だ。タッチスクリーンというデバイスがあってこそ誕生した、爽快感抜群、驚き満載の斬撃アクションRPGの世界で、魔物との戦いに明け暮れよう。
締めにこれから遊ぶ方に向け、各ハードごとの特徴を簡単に記しておこう。
iOS版は大体ご想像の通り、操作は移動も含め、すべてタッチ主体で行われる。 PlayStation Vita版はコントロールスティックによる移動に対応。ただ、ボタンは「×が決定、○がキャンセル」という海外版設定。さらにほか3つと違い、難易度選択機能がない。
ニンテンドー3DS版はスライドパッド、タッチペンによる操作で遊ぶスタイルだ。また、2画面なので、上画面にエリアマップを常に表示できる機能が備わっている。注意すべき点が3DS特有の感圧式タッチスクリーン。力を入れ過ぎると液晶に傷が付く危険があるので、プレイする際は必ず保護シートを装着するようにしていただきたい。
そして、Nintendo Switch版。こちらはPlayStation Vita版に難易度選択機能を加えた作りになっている。また、携帯モード専用タイトル。TVモードでは遊べず、起動すると画面に警告が出る。
プレイする際は、必ず携帯モードで遊ぶようにしよう。
以上の特徴を踏まえた上で、いざ斬撃アクションRPGの世界へ。
【ゲーム情報】
タイトル:『SEVERED-セヴァード-』
発売元・開発元:フライハイワークス(※Nintendo Switch、ニンテンドー3DS版)/ Drinkbox Studios Inc.
対応ハード:PlayStaiton Vita、iOS、ニンテンドー3DS、Nintendo Switch
ジャンル:斬撃アクション
価格:1,500円[税込](Nintendo Switch、ニンテンドー3DS版)、1,620円[税込](PlayStation Vita版)、240円[税込](iOS版)
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