ただただ、たくさんの男達からチヤホヤされたーーーーい!!!
その一心で男心をえげつなく弄ぶひろみ(佐久間由衣)をシェアハウス仲間の彩(大後寿々花)とコジ(村上虹郎)は最低の"隠れビッチ"とたしなめる。
"隠れビッチ"とは、一見清楚だが実は男心を弄ぶビッチのこと・・・映画『"隠れビッチ"やってました。』の原作である同名コミックエッセイでそう語るあらいぴろよさんは"隠れビッチ"だった自分を受け入れるまでに、10年を要したらしい。
主人公のひろみは、見た目に反し、愛されたい愛されたいと中身はギラギラしている。肌の露出も服の素材も"モテ"のために気を配り、相手によって適度なボディタッチや褒め言葉を使いわける。なるほどな、これがビッチの作戦か・・・同性から見ても、そのテクニックには感心すらしてしまう。
ただ、本作はそんな"隠れビッチ"の生態を紐解いて、こんなだから弄ばれたくない男性陣は気をつけるように! という注意喚起になるだけではない。むしろ男女問わず、人は多かれ少なかれ「こじらせている」ことがあるはずだ。何かしら「こじらせている」ーひろみと同じく自分への自信のなさ、家庭環境での葛藤などー私達の背中を、ちょこっと押してくれる要素が満載だ。
ひろみが"隠れビッチ"を卒業する第一のきっかけが、アルバイトをしているデパートのお惣菜売り場で働く安藤くん(小関裕太)。彼に恋してしまったひろみは、いつもと同じようにむこうが「好き!」と言ってくるのを待つ。しかし、ナチュラルモテ系の安藤くんからまさかの裏切りにあって・・・打ちひしがれる。
ひろみが「ヤリマン!」と罵倒する彩はひろみとは別の意味で恋愛下手である。「あんた達は男に依存しすぎ。自分に自信がないからって男に逃げるのをやめなさい。女じゃなくて、まずはちゃんとした人間になりなさい」二人に説教するコジの言葉が、胸に染みる。
女である前に人間であろう。そう決意したひろみだからこそ、はじめて恋愛が客観的に見えたのかもしれない。夢に向かい頑張り始めたひろみを好いてくれる三沢さん(森山未來)が第二の"隠れビッチ"卒業のきっかけだ。
「わたし実はすね毛濃いの。それでも嫌いにならない?」
嫌われることを恐れ始めたひろみの「好き」の確認は、ちょっとした可愛いものから、やりすぎ感すらあるようなものへと、だんだんエスカレーションしていく。愛されたかったひろみが、愛したいからこそ思い悩み葛藤する。その姿は、ちょっぴり共感できるかもしれない。
一方で、人はそうそう変われるものじゃない。思い起こさせるようなラストには、背筋がゾワッとすること間違いなしだ。
監督・脚本/三木康一郎
出演/佐久間由衣、村上虹郎、大後寿々花、小関裕太 、森山未來
原作/あらいぴろよ「“隠れビッチ”やってました。」(光文社刊)
2019年12月6日(金)全国ロードショー中
公式サイト:kakurebitch.jp
© 2019『“隠れビッチ”やってました。』フィルムパートナーズ/光文社