劇場公開のアニメ―ション映画を中心にお送りしている映画のレビュー/感想記事。今回は、「蒼穹のファフナー」シリーズ最新作の劇場先行上映版『蒼穹のファフナー THE BEYOND 第四話「力なき者」第五話「教え子」第六話「その傍らに」』をご紹介します。
『蒼穹のファフナー』『蒼穹のファフナー RIGHT OF LEFT』『蒼穹のファフナー HEAVEN AND EARTH』『蒼穹のファフナー EXODUS』に続く「蒼穹のファフナー」シリーズの最新作『蒼穹のファフナー THE BEYOND』。本作では新たに生を受け、転生前の記憶を失った少年“皆城総士”を軸とした物語が描かれます。第一話~第三話は2019年5月17日に劇場先行公開、現在はBlu-ray & DVDも発売中です。こちらのレビューは下記リンクからご覧ください。
【映画レビュー】蒼穹のファフナー THE BEYOND 第一話「蒼穹作戦」第二話「楽園の子」第三話「運命の器」:序盤から怒涛の展開と情報量でファンの期待を飛び越える
第一話~第三話から約半年を経て2019年11月8日(金)より公開されたのが、今回ご紹介する第四話~第六話。人類の敵であるフェストゥムに育てられた総士が、本来の生まれ故郷である“海神島(わだつみじま)”の人々と交流を重ね、自分が何者なのかを見定めようとします。
※ここから先は若干のネタバレあり
第三話「運命の器」の直後のシーンから始まる第四話「力なき者」。マークニヒトに搭乗した総士を止めるために、真矢、零央、美三香、美羽が出撃します。第一話では圧倒的な物量による“総力戦”が描かれ、目まぐるしく変化する状況に興奮させられた「THE BEYOND」ですが、今回はファフナー対ファフナーの、それぞれの機体の特性を活かした戦闘描写をまず堪能できます。展開に付いていくのがやっとだった前回と違って、ファフナーの操縦は初めてとなる総士をたしなめるような島のファフナーパイロットたちの戦いからは余裕が感じられ、零央や美三香のやりとりは微笑ましさすらあるほど。さらに表現力が向上したように見える、CGで描かれたファフナー同士の白兵戦を、落ち着いて楽しめます。
そして再び囚われの身となる総士。ここで起きるある出来事はコメディー的なシーンではないにも関わらず、個人的には少し笑ってしまいました。相変わらず遠見真矢さんは総士に手厳しい…!
自分が何者なのか、何が真実なのかを知るために、海神島で生きることを決意する総士。自分の想い出が“偽りの日々”だったことを知り、しかしその日々の中で大切な存在だった妹を奪った、真壁一騎への憎しみは癒えないまま、総士は美羽たちの優しさを受けて少しずつ変わっていきます。
島の人々の現在の暮らしも明らかになります。関係性が進展した男女や、ひとつ屋根の下で暮らすようになった人々、養子として引き取られた者など、これらの描写からは彼らの時間が着実に進んでいることが感じられました。絆で繋がっていく人々の温かなドラマがあるからこそ、本作は胸を締め付ける作品になっているのでしょう。
余談ですが、前回のレビューで当シリーズについて「顔の見分けが付きにくいのに髪型が変わっている人も多く誰が誰やら分かりづらい」と書きましたが、本作のパンフレットには「竜宮島島民家系図」というページがあり、ここではキャラクターたちのシリーズごとの外見の変化も画像によって明示されています。これは本作への理解を深める上で非常に助かりました。パンフレットは専門用語の解説やキャスト・スタッフのインタビューなども充実の内容となっているので、キャラクターの見分けに不安がある方にも、そうでない方にも、購入してみることをおすすめいたします。
第六話「その傍らに」では「ベノン軍」を名乗るフェストゥムたちとの戦いに再び身を投じることになる海神島の人々。「もう一度マークニヒトに乗りたい」という総士自らの意志と、総士の覚醒が本来の故郷である“竜宮島(たつみやじま)”への道標になる島民たちの利害の一致から、総士もまた戦闘に参加することに。
転生する前の皆城総士の意識に関する布石もあり、今後“青年総士”と“少年総士”が同一の存在なのか、全く別の人物なのかといった点にスポットが当たるのもそう遠くは無さそうです。少年総士は青年総士とは別の人生を歩み、異なる葛藤をしながら己の道を切り拓こうとしているキャラクターなので、この辺りの折り合いについて、納得のいく決着が付けば良いなと、個人的には思います。
そして終盤では、これこそ『蒼穹のファフナー』と言わざるを得ない、ショッキングな展開も。お馴染みのキャラクターにも、等しく“終わり”が訪れるのが「ファフナー」だということを、改めて思い知らされます。しかし誰かの“終わり”やそこまでの“歩み”を決して無駄にはせず、全ての命を“背負って”物語を紡いでくれるのもまた「ファフナー」です。この喪失が総士にもたらす変化も気になるところ。第七話以降の公開がまたもやいつになるのか分からないのはもどかしい限りですが、次回もまた熱い展開が待っていることを期待したいと思います。
2019年11月8日(金)より全国の劇場にて上映中!
上映時間:85分
【スタッフ】
原作:XEBEC
シリーズ構成:冲方丁
キャラクターデザイン:平井久司
メカニックデザイン:鷲尾直広
CGアニメーションディレクター:井野元英二
美術監督:野村正信・松田春香
美術デザイン:青木薫
色彩設計:関本美津子
撮影監督:師岡拓磨
編集:伊藤潤一
音楽:斉藤恒芳
演奏:ワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団
音響監督:三間雅文
主題歌:angela
エグゼクティブプロデューサー:中西豪
プロデューサー:須藤孝太郎
アニメーションプロデューサー:明官ゆう子
アニメーション制作:Production I.G
アニメーション制作スタジオ:I.Gzwei
監督:能戸 隆
製作:FAFNER BEYOND PROJECT
【キャスト】
皆城総士:喜安浩平
真壁一騎:石井 真
遠見真矢:松本まりか
春日井甲洋:入野自由
来主 操:木村良平
日野美羽:諸星すみれ
近藤剣司:白石 稔
西尾里奈:白石涼子
御門零央:島﨑信長
鏑木 彗:小野賢章
水鏡美三香:石川由依
真壁史彦:田中正彦
遠見千鶴:篠原恵美
溝口恭介:土師孝也
羽佐間容子:葛城七穂
小楯 保:高瀬右光
陣内 貢:鈴木達央
将陵佐喜:浅倉杏美
イアン・カンプ:てらそままさき
ジェレミー・リー・マーシー:遠藤 綾
貴志シャオ:小松美智子
アニラ・オーロビンド・ゴーシュ:櫻井 智
堂馬 舞:世戸さおり
ベラ・デルニョーニ:相川奈都姫
ルヴィ・カーマ:佐々木りお
ディラン・バーゼル:勝 杏里
皆城朔夜:松田利冴
マリス・エクセルシア:斉藤壮馬
セレノア:ゆかな
レガート:最上嗣生
マレスペロ:櫻井孝宏
ケイオス・バートランド:岡本信彦
フィラス・アナン:岩崎諒太
ヘスター・ギャロップ:鳳 芳野
ダッドリー・バーンズ:内田直哉
西尾行美:京田尚子
水鏡有子:鶏冠井美智子
御門昌和:最上嗣生
近藤衛一郎:永井真里子
貴志フェイ:藤田 茜
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