劇場アニメを中心にお送りしている映画レビュー。18回目となる今回は、大人気コミック原作アニメの最新劇場版『ONE PIECE STAMPEDE』(ワンピース スタンピード)のレビュー/感想をお送りします。
『ONE PIECE』に関しては若干“にわか”気味なファンの筆者。原作コミックは最近のおはなし(ワノ国編直前くらい)まで読んでいるものの、TVアニメは何年も観ていませんし、過去の劇場版はいつもレンタルが始まってから観賞していました。
しかし『ONE PIECE STAMPEDE』(ワンピース スタンピード)は20周年記念の「オールスター映画」ということで、何やら凄いことが起こりそうな予感。期待に胸を膨らませ、劇場に観に行ってきました。そして本作は、歴代のワンピース映画でもトップクラスに、楽しくて、熱くて、感動できる傑作になっていたのです。
今回はこの『ONE PIECE STAMPEDE』(以下、『スタンピード』)の魅力についてご紹介したいと思います。以前のワンピースは好きだったけど、最近の展開はよく分からない……といった方でも存分に楽しめるかと思いますので、観賞を迷っている方の背中を押すことができれば幸いです。物語の核心に迫るネタバレはありませんので、ご安心ください。
尾田栄一郎氏のコミックを原作とするアニメ『ONE PIECE』は、海賊王を目指す少年ルフィが、仲間と共に次々に登場する強敵たちを打ち倒しながら成長していく海洋冒険ロマン。
本作『スタンピード』はアニメ20周年記念作品ということで、これまでに登場した魅力的なキャラクターたちが敵も味方も多数登場します。彼らが集結するのは、20年に1度の海賊による海賊のための祭典「海賊万博」。ルフィたちも「海賊王ロジャーが遺したお宝」を手にするために参加しますが、ここに元ロジャー海賊団の一員“ダグラス・バレット”が現れ、己の野望のために立ちふさがります。その圧倒的な強さを前に、集まった面々は力を合わせて立ち向かうことになるのです。
まず本作は人気キャラクターの共演があまりにも豪華! ルフィをはじめとした海賊、スモーカーたち海軍、ハンコックら王下七武海、ルッチが属する政府軍、そしてサボら革命軍など立場の異なるキャラクターが一堂に会し、映画館のスクリーン狭しと暴れまわります。登場キャラクターの総数はなんと200人以上!! 立木文彦さんや三石琴乃さんをはじめとした人気ベテラン声優も大勢出演しており、これほど豪華な共演は『ONE PIECE』でしか不可能でしょう。
最初は別々の目的で行動している各勢力。目まぐるしく変化する状況の中で繰り広げられるバトルのうちのいくつかは原作では実現していないドリームマッチです。ゾロと藤虎(イッショウ)や、サンジとスモーカーなど、直接やりあったことのないキャラクター同士の激突に、ファンならアガること間違いなし。
バレットの圧倒的なパワーに対抗するため、反目し合っていたキャラクターが徐々に力を合わせていく様子も必見です。予告映像で描かれているルフィ、サボ、ハンコック、バギー、スモーカー、ルッチ、ローらによる「奇跡の共同戦線」はもちろん、ユースタス・キッドやウルージ、ボニーらにルフィも含めた「最悪の世代」による共闘など、見どころが目白押し。
そんなオールスターにたったひとりで立ち塞がるバレットの強さも説得力抜群。これまで多くの敵を打ち倒してきたルフィの能力を物ともしないスピード、パワー、防御力は凄まじく、さらにはある能力を隠し持っていることも判明し、手に負えません。特に後半のCGを駆使した「圧倒的な強大さ」の表現は観ていて絶望感を覚えるほど。ルフィたちがどのようにしてバレットに立ち向かうのか、注目していただきたいです。
これまでの劇場版『ONE PIECE』はその多くが「ルフィたちが強大な敵と戦うことになり、圧倒的な力の前に敗れる」→「ルフィたちとゲストキャラクターのドラマが描かれる」→「ドラマを踏まえた最終決戦」という流れでしたが、『スタンピード』は上映時間のほとんどをバトルが占め、そのバトルを通じてキャラクターの関係性が変化し、物語が進行していく構成。息もつかせぬアクションの連続に、鑑賞中は手に汗握りっぱなし。東映アニメーションが誇る作画班による戦闘アニメーションも圧巻で、序盤のお宝争奪戦から終盤の規格外のバトルに至るまで、映像のテンションが落ちることは一切ありませんでした。
本作の監督をつとめるのは『映画 プリキュアオールスターズDX』3部作でも監督をつとめた大塚隆史氏。たくさんのプリキュアを全員かっこよく、魅力的に活躍させた手腕は、『スタンピード』でも遺憾なく発揮されています。たとえわずかしか見せ場のないキャラクターでも、その能力が分かりやすく、魅力的に描かれており、また誰とどういった信頼関係や因縁を持っているのかが理解できる台詞回しが徹底されているのはさすが。原作を熱心に追っていない方でも混乱することは少ないはずですし、きっと本作をきっかけに新たに気になるキャラクターが出来るのではないかと思います。ずっと劇場版『ONE PIECE』の監督をやりたかったという大塚氏が、作品への深い理解と愛情を持ち合わせているからこそ為せる技と言えるのではないでしょうか。
規格外とも言える人数のキャラクターの活躍がこれでもかと詰め込まれ、上映時間のほとんどがノンストップのバトル・アクションで構成された本作は、監督をはじめとした、実力と「ONE PIECE愛」を兼ね備えたスタッフが結集したことで実現したのです。
こうして書いていくと、原作の「頂上戦争編」のように麦わら海賊団の面々の活躍は少ないように思われるかもしれませんが、そこは20周年記念作品。彼らの中でも特にゾロ、サンジ、ウソップといった「東の海(イーストブルー)」の頃からルフィと苦楽を共にするいわゆる「麦わら海賊団初期メンバー」たちにはここぞという見せ場が与えられています。彼らの長年のファンもきっと満足できることでしょう(ナミだけ大きな見せ場がないので、そこは少々不満が出るかもしれません)。彼らの中に、今回特に大きな役割を担う人物がいるのですが……それが誰なのかは、ぜひ映画本編を観て、確かめてください。
ファンサービスもツボを押さえたものばかり。ここぞというシーンでの楽曲のチョイスも初期からのファンこそ嬉しいものとなっています。見事な伏線回収を絡めた終盤のサプライズには、思わず涙してしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか?
『ONE PIECE STAMPEDE』はこの20年間で「ONE PIECEが好きだった」時期がある方ならば必ず楽しめる作品です。もう原作から離れてしまった方も、きっと最近の展開に興味を持つきっかけになるはず。20年間ずっとファンだった方ならば、もっと『ONE PIECE』が好きになれることは言うまでもありません。ぜひより多くの方に観賞していただきたいと思います。
2019年8月9日(金)より全国の劇場にて上映中!
上映時間:101分
【スタッフ】
原作・監修:尾田栄一郎(集英社週刊「少年ジャンプ」連載)
監督:大塚隆史
脚本:冨岡淳広 大塚隆史
音楽:田中公平
キャラクターデザイン・総作画監督:佐藤雅将
美術監督:岡本穂高
美術設定:須江信人
色彩設計:永井留美子
CGディレクター:新井啓介
撮影監督:和田尚之
製作担当:稲垣哲雄
主題歌:WANIMA「GONG」(unBORDE / ワーナーミュージック・ジャパン)
【キャスト】
田中真弓
中井和哉
岡村明美
山口勝平
平田広明
大谷育江
山口由里子
矢尾一樹
チョー
磯部勉
ユースケ・サンタマリア
指原莉乃
山里亮太(南海キャンディーズ)
(C)尾田栄一郎/2019「ワンピース」製作委員会