夜も更けてきたお時間にお送りいたします、今回の「ゴールデンゲームハンマー」でご紹介する一本は、暗闇の世界を旅するロウソクの子が主人公のアクションゲーム『キャンドルちゃん』です。
本作は2013年8月に開催されました「Ludum Dare」と呼ばれる48時間限りのゲーム作成コンテストにおきまして、「10秒間」という題材を元に作られたゲームの中で特に高い評価を獲得した作品です。後にマイクロソフト様が提供している「ID@Xbox」という、インディーゲーム支援プログラムを通す形で製品版として作られることになりまして、2017年2月1日、Xbox One用ダウンロードソフトとして発売されました。「Spotlightor Interactive」という、中国は北京の独立系ゲーム開発スタジオ様の手によって作られています。
2018年10月18日には、PlayStation 4版の販売が開始されました。こちらは先行したXbox One版におきましては、無料ダウンロードコンテンツとして配信されました、追加のステージと物語が楽しめる『迷えるキャンドルちゃん』も含んだ完全版仕様となっておられます。Xbox One版に関しましては、本製品版とは別にストアページからダウンロードすることでお楽しみいただけます。無料です。料金は一円も取られません。とても大事なことなので、繰り返しました。
内容は、パズル的な要素を含んだアクションゲームとなります。ゲームの流れはとても簡単。主人公の「キャンドルちゃん」を動かして、「ゴール」に辿り着くだけです。「章」単位で用意された「ステージ」を順に攻略しながら、キャンドルちゃん憧れの存在である「灯台さん」のてっぺんへと辿り着いて、ビッグな存在になるための秘訣をご本人からうかがうことを目指します。
キャンドルちゃんの動かし方も簡単です。先行して発売されたXbox One版を元といたしますが、コントロールスティックで移動、Aボタンでジャンプ、XまたはYボタンで火を灯す。たったそれだけです。
ですが、単にゴールを目指すだけのアクションゲームではございません。それを現しますのが「キャンドルちゃん」御本人です。名前の通りに「キャンドルちゃん」はロウソクです。容姿を簡単に表しますと、足の生えた燭台とロウソクです。そのまんまですね。だって、「キャンドルちゃん」なのですから。これでロウソクでないとしたら、なんなのでしょうか。
それはさておきまして、ロウソクの「キャンドルちゃん」、先ほどの紹介にもありました通り、火を灯せます。火を灯すことによって、どのようなことが起きるのかと言いますと、ステージの構造が見えます。
キャンドルちゃんが冒険します「ステージ」は一面、暗闇に覆われています。完全な暗闇という訳ではなく、月や炎などの光で、わずかに地形は見えますが、足場は真っ暗で、よく見えないのです。奈落の底行きになってしまう「穴」、キャンドルちゃんを痛めつける「罠」も見えません。中には姿をさらけ出しているものもございますが、その近くに別の障害が仕掛けられていることがありますので、決して油断できません。
こう言った足場や罠を目に見えるようにするため、火を灯すことになります。つまり暗闇の中、火を灯して光を作り出し、目に見えるようになった道を進みながらゴールを目指すのです。これが本作の大きな特徴となります。
また、「キャンドルちゃん」はロウソクです。ロウソクは火を灯し続ければ蝋が溶け出し、最終的には全てが液体になって、灯していた火も消えてしまいます。キャンドルちゃんも同じです。火を灯す度に身体が溶けていきます。全て溶け切ってしまうと、どんなことになるのか。もちろん、力尽きて倒れてしまいます。なので、火を灯すことは自らを痛めつける行為でもあるのです。
火はX、またはYボタンを押しっぱなしにすることで、灯し続けられます。ですが、10秒後には蝋が完全に解け落ち、キャンドルちゃんは倒れてしまいます。だったら、10秒以内にゴールに辿り着ければと考えるかもしれませんが、残念ながらそこまでの距離、長いです。しかもキャンドルちゃん、遅いです。歩いているも同然な速度で動きます。「遅えよ!」なんて文句を言っちゃダメですよ。
なので、ステージのあちこちに置かれた別のロウソクに火を灯して明かりを確保したり、瞬間的に火を点けて映し出された地形を記憶して、ゆっくり慎重に進めていくのが基本となります。もちろん、瞬間的に火を点けた場合でもキャンドルちゃんは溶けます。時には火を灯さないと動かない仕掛けもありますので、イタズラにポッポと点けてはダメです。鳩じゃないのですから。
このように基本はステージクリア型のアクションゲームなのですが、「ロウソク」と「火を灯す」という二つの要素によって、独特な遊びが楽しめるようになっています。アクションゲームとしてはとてもシンプルなのですが、根幹の遊びは今までありそうでなかった新しさ。昔ながらの良さと今なりの新しさを持ち合わせたゲームに完成されています。
◇分かりやすいゲームルールと「暗闇」に着目したシステム
先ほどのご紹介の通りゲームルール、操作はとても簡単。アクションゲームが初めての人でも安心して遊べる作りになっています。難易度も始めは簡単、中盤から少し難しくなり、後半にこれまでの応用が試される理に適った設定で、心地よいやり応えを得られます。
「暗闇」の世界で火を灯し、光を確保しながらステージを進む、3D表現を取り入れたゲームにおける「光と影」の演出を遊びとしてまとめた作りも見逃せません。「ロウソクに火を灯す」動作から着想を得て、一本のアクションゲームに仕上げた本作は、まさに正真正銘の”光と影(或いは闇)で遊ぶゲーム”と言っても過言ではないでしょう。これだけでも本作には大きな価値があります。
◇アイディアたっぷり・遊び心満載のステージ
キャンドルちゃんのできるアクションが極めて少ないことから、ステージも似たり寄ったり、同じことの繰り返しとなる内容を連想するかもしれません。ですが実際はその逆で、ゴールを目指すこそ繰り返されながらも、その道中には次々と奇想天外、ビックリ仰天の仕掛けが「これでもか!」と言わんばかりに出てきます。
特に中盤以降の章は、ゴールに辿り着くまでにパズルのような仕掛けを解くことになったり、不思議な乗り物を動かしながら進むなどのユニークな展開が連続します。終盤の章になりますと、危険で行動力に秀でたトラップが沢山登場するだけに留まらず、なんとキャンドルちゃん自身が分裂する衝撃の出来事が。そしてそこから、今までのステージで培ってきた経験と知識が全く役立たない、新しい操作とテクニックが要求されるステージが連続して、ますます大変なことになります。
◇衝撃の灯台さん
そして、極めつけが本作の最終目的地にして、キャンドルちゃん憧れの存在である「灯台さん」です。最後の章で頂上まで辿り着きますと、御本人とお会いすることができます。
しかしながら、そこから本作最大級の衝撃に満ちたイベントが起きます。
一体、それがどのようなイベントであるのかは大変申し訳ございませんが、ゲームを実際にプレイしてその目で確かめてください。参考程度に、ワタクシ(筆者)がそれに直面した時の感想を一言で申します。
今までの『キャンドルちゃん』はどこに行った!!
◇「キャンドルちゃん?」⇒「キャンドルちゃん!」
ところで、本作の原題はタイトル画面で分かります通り『Candleman』です。
日本語版の題名は、『キャンドルちゃん』となっております。
恐らく、翻訳がおかしいと思うでしょう。ワタクシもそうでした。
ですが、実はこの題名、本作の物語にこれ以上ないほどマッチしているのです。
きっと、最後まで全てやり切った時、『キャンドルちゃん』以外に考えられない!……という気持ちにさせられるでしょう。原題『Candleman』は全く似合わないのです。何故なのか。それは例によって、ゲームを実際に遊んでお確かめください。
物語も素晴らしい出来です。「起承転結」がしっかりとしていまして、最初から最後まで、目が離せない展開が繰り広げられます。章のステージを全てクリアする度に挿入されるデモシーンも、落ち着いた語り口のナレーション(※英語音声)、童話らしさを感じさせる温かみのある字幕テキストで楽しませてくれます。
ビックな存在になる夢を求め、「灯台さん」へと向かうキャンドルちゃんはどんな運命を辿るのか。そして、夢であるビッグな存在になれるのか。道中、様々な障害と危険が行く手を阻みますが、ぜひ、エンディングまで辿り着いてみてください。きっと、すごくいい物語を楽しませていただきました、という感謝の気持ちと”一つの教え”を得られることでしょう。
ただ、物語に関しては一点、冒頭でもご紹介しましたが、本作のエンディングは「迷えるキャンドルちゃん」のダウンロードコンテンツが無いと辿り着けません。日本で先行発売されたXbox One版はそのような仕組みとなっていますので、購入された際にはセットで「迷えるキャンドルちゃん」をダウンロードしておくことをおすすめいたします。なお、これもまた冒頭でご紹介しましたが(いい加減しつこいですが)、「迷えるキャンドルちゃん」は無料のダウンロードコンテンツです。お金は一円も取られません。
■迷えるキャンドルちゃん(Microsoft Store内) ※ダウンロードには『キャンドルちゃん』製品版が必要となります。
また、後発のPC、PlayStation 4版はこのダウンロードコンテンツがあらかじめ収録されていますので、別途、ダウンロードする必要はございません。Xbox One版だけはその必要がある、ということでご注意ください。
他にも、本作には章ごとに様々なステージが用意されていますが、いずれも物語の状況にちなんだ名称が付けられているという面白い特徴があります。さらにステージ内には明かりを確保するのに役立つ「ロウソク」があちこちに置かれていまして、これら全てに火を点けるというやり込み要素も。しかも、全てに火を点けてステージをクリアしますと、ステージの名称が変わります。それも、キャンドルちゃんの前向きな気持ちが滲み出た、心温まる名称になるのです。
基本的に物語は章終了後のデモシーンを主軸に描かれますが、こう言った部分で細かい展開を語るというユニークな演出と仕掛けが凝らされているのも必見です。変化の対象が対象だけに、積極的に全点灯を目指しに行きたくなる魅力に富んでいます。
ボリュームも、普通にクリアするだけなら大体5~6時間程度ですが、多彩なステージと魅力的な物語もあって密度は申し分なし。最後の最後まで退屈することなく楽しめます。
総じて、可愛らしい題名とシンプルな作りとは裏腹な高い完成度を誇ります本作。少しアクション周りが地味ではありますが、それらを跳ね除ける面白さが詰まった傑作です。アクションゲーム好きはもちろんのこと、あまり得意でないという方もぜひ、遊んでみてください。ありそうでなかった新しさをしみじみと実感させられるでしょう。
キャンドルちゃんと共に、不思議な夜の世界を旅してみませんか。
けれども、火の取り扱いには気を付けましょうね。
【ゲーム情報】
タイトル:『キャンドルちゃん』
発売元・開発元:Spotlightor Interactive
対応ハード:Xbox One、PC(Windows)、PlayStation 4
ジャンル:アクション
価格:1,620円[税込](Xbox One)、1,520円[税込](PC)、1,664円[税込](PlayStation 4)
関連リンク:
■商品&購入ページ:Xbox One版(Microsoft Store内)
■商品&購入ページ:PlayStation 4版(PlayStation Store内)
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