例え、発売から一定の年月が経過したゲームソフトでも、それが特別な一本であればお構いなしの精神でピックアップする連載特集「ゴールデンゲームハンマー」。第四回となる今回紹介するのは、2014年6月18日にPlayStation 4、PlayStation Vita用ソフトとして発売された『PixelJunk Shooter Ultimate(ピクセルジャンクシューター アルティメット)』。
本作は京都に拠点を置くゲーム開発会社「キュー・ゲームス」が制作した全方位型シューティングゲーム。最新技術と昔ながらの遊び心地を持ち味とする同社の看板タイトル、PixelJunk(ピクセルジャンク)シリーズの第四弾で、2009年12月24日にPlayStation 3用ダウンロードソフトとして発売された。約2年後の2011年3月3日には、続編も発売。それら二作をセットにしたのが、こちらのタイトルだ。開発と販売は、イギリス・ミドルズブラに拠点を置くゲーム開発会社「Double Eleven」が担当している。
遥か未来、人類は宇宙への進出を果たした。しかし、そこに安全な環境は少なく、生活を営むにも膨大なエネルギー資源が必要とされた。そのため、巨額を投じた惑星開拓ビジネスが激化の一途を辿り、多くの採掘労働者、投資家、科学者たちが未知なる惑星の探査へと乗り出していった。そんな中、辺境の開拓惑星「アポキスプライム」より救難信号が発信。それを受信した一台のスペースシップは、遭難者達を救助するため、発信源の惑星地下へと向かうのだが、そこでは謎の災害が発生していた…。
このような物語と共に始まる本作は、360度自由に動き回れるステージを進んで、遭難者こと「サバイバー」を救助していくという内容。一般的なシューティングゲームと異なり、スクロールは自機の動きに合わせて画面が動く任意方式で、ステージのクリア条件も「脱出ハッチ」、いわゆるゴールに辿り着くというものになっている。そのため、アクションゲームに近い遊び心地を持つ。
舞台となるステージも、複数のエリアから成り立つ一風変わった構成。基本的には助けを求めるサバイバーを全員助け、次のエリアに繋がるゲートを開放するという流れで進む。サバイバーはL1、L2ボタンを押すと繰り出す「アーム」で掴めば救助できる。逆に敵に襲われたり、マグマなどの害を与える流体(後述)に接触、間違って攻撃(※R1、R2ボタンによるショット)してしまうと死亡。5人以上の犠牲が出てしまうとミスになる。
ただ、必ずしも全員助ける必要はなく、犠牲が5人以内に収まればゲートが開き、次のエリアへと進める。ミスしてもステージの最初からやり直しにはならず、そのエリアの初めからの再開となるので、ペナルティも軽めだ。しかし、全員救助できれば相応のご褒美がステージクリア後にもらえるほか、その証も記録される。サバイバーのやられ様も生々しく、悲鳴と合わせて心を抉ってくるので、なるべく救助するよう尽力していくのがお薦めだ。鬼畜になっちゃあきまへんで。
また、ステージでは「フルイド」と称された水、マグマなどの流体が行く手を阻む。これこそが本作最大の特徴で、それぞれが組み合わさることで生じる自然現象を活用し、障害を乗り越えていくのだ。
マグマに水を振りかけて無害な泥地にしたり、氷にマグマを振りかけて溶かすなど。いずれも実際の現象に基づいた反応を起こし、地形に様々な変化をもたらす。しかも、各種流体には物理演算処理が施されていて、本物さながらの動きを見せる。
その生々しさたるや、気持ち悪さすら覚えるほど!(※褒め言葉です)これらの現象と法則を応用し、突破口を見つけ出すパズル的な発想が求められる展開も多くあって、プレイヤーの頭を悩ませてくる。
他にも「温度」によって管理される自機の耐久力、右スティックで狙う方向を調整しながら実施する攻撃、「スーツ」による特殊アクションなど、ユニークなシステムと要素が満載。ゲームモードもメインの「アドベンチャーモード」に加え、オンライン対応の対戦プレイを収録。さらにPlayStation Vita版とセーブデータを共有できるクロスプレイ機能、PlayStation 4版独占の「アドベンチャーモード」のオンライン協力プレイを搭載するなど、遊び方の幅も広い。
まさに唯一無二のシューティングゲーム。迫りくる敵をショット攻撃で倒していくだけに留まらない、多彩な遊びと最新の技術がもたらす斬新なスリルを味わえる作品に完成されている。
◇これ一本で『ピクセルジャンクシューター』の全てが味わえる
PlayStation 3のオリジナル版『ピクセルジャンクシューター』は、新展開を見せようとする所で終わってしまう、俗に言う「クリフハンガー(※海外ドラマのシーズン最終回でお馴染みの作劇手法。簡潔に言えば宙吊りエンド)」を採用した作品で、続きを遊ぶには続編の『ピクセルジャンクシューター2』を購入しなければならなかった。
本作は一作目と二作目を一本にした内容なので、その手間を踏む必要がない。
さらに続編は、前作クリア済みのプレイヤーを前提とした高い難易度を特徴としていて、個別に販売されているがために前作未経験者が誤って購入し、地獄のような苦しみを味わった末に心が圧し折られ、真っ白に燃え尽きかねない劇物に等しい一面があった。本作は操作の基本を学ぶ一作目のステージから始まって、大体のテクニックを習得し終えてから二作目のステージへと入る構成になっているので、そのような被害に遭う心配は皆無。
なので、これから『ピクセルジャンクシューター』というゲームを始めるに当たっては、まさにこれ一択と断言できる内容だ。オリジナル版から変更が加えられた仕様も幾つかあって、特に空になればステージ最初からやり直しになった残機制が廃止され、自由に何度も挑戦可能な仕組みに改められているのは大きな注目点。オリジナル版がクリアできなかったプレイヤーも、本作なら最後までやり遂げられる……かもしれない。
◇圧巻の流体表現
物理演算処理により、本物さながらの動きを見せる流体は思わず見入ってしまうほどに美しい。僅かに残った量さえも、ちゃんと物理法則に基づいて滴り落ちるという細かさ。裏を返せば、それがマグマなどの自機に害を与える流体なら、最後の一滴が流れ落ちるまでは油断できないことを意味する。そんな物理法則に基づくなりの脅威があるのも本作ならでは。
敵の中にも、マグマなどの流体で攻撃してくる種類が存在。もちろん、物理法則に基づく放物線を描き、粒も落ちてくるので、その辺りを考慮しないと思わぬ直撃を喰らい、泣きを見る。特にシューティングゲーム好きのプレイヤーほど、その思いもしない軌道に翻弄されるはずだ。同時に直線に沿って飛んでくる、一般的なシューティングゲームの敵弾の”やさしさ”を知るかもしれない。
◇アイディア満載・驚きたっぷりの全20以上のステージ
流体運動という、珍しい題材を扱った内容だけに、各ステージに凝らされた仕掛けの数々は斬新なものばかり。思わず声が出てしまう驚きが連続する。ゲームが進むと登場する「スーツ」による特殊アクションも「そういうのがあったか!」と、感心してしまうものばかり。このシステムあってこそ成し得た、唯一無二の体験が味わえる。
シューティングゲームということで、敵との戦闘もツボを押さえた面白さ。いずれもユニークな攻撃でプレイヤーに襲い掛かってくる。巨大なボスとの戦闘もあり、こちらでも流体をテーマにした本作ならではの駆け引きを楽しめる。
◇シューティングゲーマーも唖然とする脅威の数々
パズル的な展開が多い関係で、ゲームテンポは比較的スローペース。なので、本格的なシューティングゲームを求めるプレイヤーほど違和感を覚えやすい。だが、ゲーム後半にはそんなプレイヤーも唖然とさせる驚異の数々が立ちはばかる。
詳しくは伏せるが、本作の最終ボスはシューティングゲーム好きなら一度でもご覧いただきたい存在だ。何故なら、その者はシューティングゲームの脅威とされる「弾幕」以上に恐ろしいもので攻撃してくるからである。実際に体験すれば、これまで同ジャンルに対して抱いていた前提知識が驚天動地の勢いでひっくり返る……かもしれない。
惑星「アポキスプライム」の地下世界も見所。サバイバーを救助するにつれ、プレイヤーはどんどん惑星の地下へと潜っていくことになるのだが、徐々に遺跡、工場施設と言った人工的に造られた場所が登場するようになって、謎が深まっていく。そして、エピソード3の最終ステージで待ち受けるボスを倒した後、度々発生していた地下災害の正体が明らかとなるのだが……これ以上は実際にご覧になって欲しい。きっと、さらなる真相を求めて、どんどん進めていってしまうだろう。
独特なゲームシステム、アイディア満載のステージで唯一無二の体験を味わえる本作。PixelJunkシリーズは、本作の他にも見下ろし視点のレースゲーム『PixelJunk RACERS』、タワーディフェンスゲームの『PixelJunk MONSTERS』、ワイヤーアクションゲームの『PixelJunk Eden』、そしてサンドボックスゲームの『PixelJunk Nom Nom Galaxy』など、多彩なシリーズ作が発売されている。2019年現在もPlayStationシリーズに留まらず、Windows、Nintendo Switchの他機種向けにも新作を供給するなど、精力的に展開中だ。
2014年発売のため、作品としては古くなってしまうが、5年近くが経過したも色褪せない魅力と新しい面白さが詰まったシューティングゲームに完成されている。
特にシューティングゲームは得意でない、あまり遊ばないという人ほど楽しめること間違いなしの一本。シューティングゲーム好きにも見所満載の内容になっているので、興味があればぜひ、遊んでみていただきたい。
美しくも、時に牙を向く流体運動の世界があなたを待っている!
【ゲーム情報】
タイトル:『Pixel Junk Shooter Ultimete』
発売元・開発元:Double Eleven Ltd / キュー・ゲームス
対応ハード:PlayStation 4、PlayStation Vita
ジャンル:シューティング
価格:1,998円[税込](ダウンロード版) ※クロスバイ対応
関連リンク:
■商品&購入ページ:PlayStation 4版(PlayStation Store内)
■商品&購入ページ:PlayStation Vita版(PlayStation Store内)
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