毎日、新作が誕生する昨今のゲーム市場で、見落とされているかもしれない特別な一本を紹介する「ゴールデンゲームハンマー」。
第二回の今回は、2018年2月22日にユービーアイソフトより発売されたNintendo Switch用ソフト『レイマン レジェンド for Nintendo Switch』を紹介する。
本作は2013年10月13日にWiiU用ソフトとして発売され、後にPlayStation Vita版も発売された横スクロールアクションゲーム『レイマン レジェンド』のNintendo Switch版。
「レイマン」とは、ユービーアイソフトのマスコットキャラクターで、実に20年以上の歴史を誇るシリーズ。初代『レイマン』は、1995年9月22日にPlayStation、同年11月17日にセガサターンで発売された。PlayStation版はゲームアーカイブスにて配信中で、PlayStation Portable、PlayStation 3、PlayStation Vitaで遊べる。
2012年にはPlayStation 3、PlayStation Vita、ニンテンドー3DS、PC(Windows)向けの新作『レイマン オリジン』が発売。本作は同作の流れをくむ続編に当たる。
舞台となるのは「マスター・バブルドリーマー」と呼ばれる創造主の夢によって作り出された世界。妖精たちが月の光から生み出したヒーロー「レイマン」は、愉快な仲間と共に悪夢から世界を守ってきた。
だが、再び悪夢によって悪い魔法使い、魔物が生まれてしまい、妖精たちが襲われ始めた。バブルドリーマーに呼びかけられたレイマンとその仲間は、夢の世界を彼の者たちから守るべく、冒険へと旅立つ……というのがストーリーの大筋だ。
内容は5つのワールドに用意されたコースに挑んで、夢の世界で暴れる魔物たち、彼らを先導する悪い魔法使いを懲らしめながら、捕まった妖精「ティーンシー」の救出を目指す、横スクロールのアクションゲーム。
基本的にゴール到達を目指してコースを駆け抜けていくという、ジャンルの伝統に則った構成で展開する。もちろん、各ワールド最後はボスとの戦いとなる。ただ、次のワールドへ進むのにボスを倒す必要はなく、救出した「ティーンシー」の人数が一定に達すると次のワールド、及びそのコースが解禁されていく仕組み。なので、ワールド1の途中でワールド2のコース攻略を始めるなど、順番に沿わない自由な攻略順で進めていける。
だが、ボスを倒さねば、悪い魔法使いは成敗できないし、エンディングにも辿り着けない。いつかは向き合わねばならない関門だ。
勇気を振り絞って戦い、奴らに鉄拳制裁をかましてやろう。
また、「ティーンシー」はコースごとに10匹捕まっている。その内の2匹はコース内の「隠し部屋」におり、助け出すにはそこに至る入口を探し出さねばならない。さらにコースには「ラム」と呼ばれる、金色に光る小さな妖精も飛び交っていて、彼らをどれだけ集められたかによってコースクリア後に貰えるトロフィーの数が変化。時には「ラッキーチケット」なるアイテムも手に入る。
それに合わせて特別なコースが解禁されたり、時にはレイマン以外のキャラクターが使えるようになることも。このような探索・収集要素も豊富にあり、一度クリアしただけでは終わらないほど密度の濃い内容になっている。しかも、このようなコースがなんと120以上。横スクロールアクションとしては、規格外の物量を誇る。
コースの中には、レイマンの仲間「マーフィー」に仕掛けを動かしてもらいながら進む、連携プレイが要求されるものもある。
こちらのコースはWiiU版にもあったもので、WiiUゲームパッド上でマーフィーをタッチ操作などで動かし、自走するレイマンの仲間「グロボックス」の進路を確保する、誘導アクションゲーム風の作りだった。Nintendo Switch版では、レイマンとマーフィーを交互に操作する仕組みへと一新。WiiU版とは趣の異なる作りに改められている。
WiiU版の誘導アクションが遊べるコースも、「マーフィーのタッチ」という新たなワールドに収録。こちらは操作上の関係で、携帯モードでなければ遊べない。WiiU版同様、タッチ以外に内蔵のジャイロセンサーを使う場面もあり、本体を”ぐるり”と回転させることも求められる。プレイする際は両隣に人が居ないか、ご注意を。
他にNintendo Switch版では、最大四人までの対戦が楽しめる「カンフーサッカー」がワイヤレスのローカルマルチプレイに対応。外出先で、本体四台を揃えての対戦が楽しめるようになった。もちろん、Joy-conのおすそわけプレイにも対応。本編も二人から四人までの協力プレイが楽しめるので、Nintendo Switch版ではその辺りのハードルも下がっている。
全体的にアクションゲームとしては正統派。突飛な特徴もなく、素直に遊べる作品だ。だが、それゆえに作り込みが圧巻。”サービス精神旺盛”の一言がよく似合う、エンターテインメント色の濃い傑作に完成されている。
◇まさに山あり谷あり、仕掛けてんこ盛りの120以上に及ぶコース
シンプルにゴールを目指すものから、仲間の協力が重要な連携型、後方より襲い来る巨大な敵からの逃亡劇、特殊なオプションを装備してのシューティング戦など、とにかくコースのバリエーションが豊富。思わずアッと言わせるアイディアも沢山盛り込まれていて、遊んでいて退屈しない。しかも120以上もある中、どのコースでも新たなネタが飛び出す。
「これがエンターテインメントの真骨頂だ!」と言わんばかりの作りには、度肝を抜かれること間違いなし。ここまで盛り沢山な内容で、隠し部屋探しを始めとする探索・収集要素もあるので、どれほど遊び応えがあるのかは想像にかたくないだろう。
数あるコースの中でも、筆者イチオシは「リズムコース」。このコースはワールドのボスを倒すと遊べるようになる。名前の通りに音楽に合わせてアクションを決めていくコースで、それらと絶妙にシンクロするステージの構成と演出で楽しませてくれる。バックで流れる音楽に有名な曲(例:アイ・オブ・ザ・タイガーなど)が採用されているのもポイント。アクションゲームが好きな人なら、一度でも遊んでみていただきたい見所満載のコースだ。きっと、プレイ中は言葉に表しがたい爽快感と高揚感に襲われるはず。
◇遊びやすさへの妥協なきこだわり
主人公のレイマンは敵やトラップに接触すると瞬時にやられてしまう体質のため(※ハートのアイテムを持つと、一回だけ防いでくれる)、全体的な難易度は高め。特に終盤は僅かな操作ミスが命取りになる、シビアな展開が多い。
だが、ミスしても難所のすぐ近くから再開できるなど、チェックポイントが豊富。さらに残機制がないので、幾らミスしても絶対にゲームオーバーとはならない。ミスから再開までの時間も僅か1~2秒と非常に速い。
そんな配慮が凝らされているので、難しいコースでもストレスなく、楽しく気持ちよく遊べる。もちろん、アクションゲームの要でもある操作性も良好。少しフワッとしたところもあるが、思い通りにキャラクターを動かせる設計だ。
また、コース開始前には数秒ほどのロード時間を挟むが、この間にもレイマンを動かせ、宙を舞っている回復アイテムを獲得できれば、ハートを所持した状態でコースを始められる。なので、待ち時間も退屈せず!地味ながら、すごいことをやっているのだ。
◇前作『レイマン オリジン』も遊べる!?
実は120コース中40コースは前作『レイマン オリジン』のコース。過去作のコースも遊べるのだ。しかし、前作と本作のゲームシステムが異なる関係で、細かい部分に変更が加わっている。また、前作には60以上のコースが収録されているのだが、本作で遊べるのはその内の40コース、残る20コースは遊べない。
とは言え、40もの前作コースを遊べるだけでも太っ腹。もちろん、ボス戦もあるほか、こちらでも「ティーンシー」の救出に取り組むことになるので、一通り攻略するだけでも相当なやり応えを得られるはずだ。
◇中毒性抜群のオンライン対応チャレンジモード
本作には、本編とは別にオンラインに対応した「チャレンジモード」も用意されている。提示される課題に挑む単純明快な内容だが、短時間で遊べるように設計されたコース、難しすぎず優しすぎずの塩梅でまとめられた難易度、そして成績に応じて得られるトロフィーの存在もあって、よりよい結果を求めて何度もプレイしたくなる中毒性がある。
成績もオンラインのリーダーボードに自動でアップロードされるほか、世界中のプレイヤーの記録を閲覧できるので、高みを目指そうとなれば、ますます止め時が分からなくなる。チャレンジも「デイリー」と「ウィークリー」の二種類があり、前者はその名の通りに毎日課題が変わるので、常に新鮮な気持ちで楽しめる。また、いずれも課題期間が終わるタイミングでリーダーボード上のプレイヤーの総合成績が決定され、それに応じたボーナスも得られる。
オリジナルのWiiU版の時より存在する要素だが、このNintendo Switch版は携帯モードで遊べるようになったため、外出先でも気軽に楽しめるのが最大の強み。ただ、繰り返しになるが一度、極めようとすると止め時が分からなくなるほど中毒性が高い。電車やバスの待ち時間にプレイすると、乗り過ごしという名の地獄を見ることになる。やり過ぎはホドホドに。
本作のオリジナルであるWiiU版は、まさに不遇の傑作だった。
当初はWiiU独占の新作として発表され、日本では任天堂から販売されることが報じられた。だが、WiiUの販売不振が起因し、マルチプラットフォーム展開へと大きく方針転換。海外ではPlayStation 4、Xbox One、PlayStation Vitaなどでも発売されるに至った。日本は当初の予定通り、WiiUで任天堂から発売。だが、件の方針転換が影響したのかプロモーションが全く行われず、同じ時期に発売された新作の影に隠れる形で出ることに。
それがいかなる結果を招いたのかはお察しの通り。2014年にPlayStation Vita版が発売に至ったことからも分かるだろう。そして、このNintendo Switch版も満足なプロモーションは行われずに発売され、埋もれた状態になっている。
率直に言って、本作は昨今の横スクロールアクションゲームの中でも指折りの傑作だ。ボリューム、ゲームバランス、サポート機能全般、マルチプレイに至るまで、恐ろしく手の込んだ作りになっている。フランス生まれゆえのアクの強さがキャラクターデザイン周りにあるが、遊んでみるとそんなことが全く気にならなくなる面白さがある。
これほどよく出来た、面白いゲームがなぜ、埋もれる運命を辿らねばならないのか!
いくら止むなき事情があったにせよ、不条理にも限度がある!
もし、アクションゲームが好きで仕方がないのであれば、一刻も早く本作を遊んで、ガツンと一発喰らっていただきたい。そして、知って欲しい。『アサシンクリード』、『レインボーシックス』、『ファークライ』などで知られるユービーアイソフトのマスコットを務めるキャラクターの底力というものを。それだけの逸品なのだ! 逸品なのです!
【ゲーム情報】
タイトル:『レイマン レジェンド for Nintendo Switch』 発売元・開発元:ユービーアイソフト 対応ハード:Nintendo Switch ジャンル:アクション 定価:4,800円[税別](パッケージ版 / ダウンロード版) CERO:A(全年齢対象) 関連リンク:公式サイト / 商品情報■第8回『X-Morph: Defence(エックスモーフ ディフェンス)』
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