1~2年前ほどから映画館などで流れた予告で話題になっていた京都アニメーションの新作オリジナルアニメ、「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」がとうとう最終回を迎えました。毎週観る度に泣き、そして木曜日の朝に目を腫らしてしまうクッソ気持ち悪いアラサーのおじさんがここに居るわけですが・・・この作品を見て泣かないなんて人は居ないでしょう。
・どんなお話だったの?
話は、大陸を二つに分断するほどの戦争が終結したところから始まります。かつて軍人として戦った少女、ヴァイオレット・エヴァーガーデンはとある港町で自動手記人形と呼ばれる手紙の代筆を専門にする仕事に出会います。依頼人の心情を手紙に紡ぎながら、ヴァイオレットは大切な人から告げられた今際の言葉の意味を、少しずつ知っていくのです。
とまあ、以上があらすじになります。
・特に印象深い第10話
特に「泣いた」という人が多いのは、第10話ではないでしょうか。第10話の依頼人は、小さな娘と共に大きな屋敷に住む母親です。この母親は病に伏せっており、「遠く、はるか先に居る人」に向けて出す手紙の代筆を、ヴァイオレットに依頼したのです。ネタバレになるので多くは語りませんが(DVDを、買おう!!私は既に予約済みだ!!2018年7月に発売される4巻には、番外編も収録されるぞ!!)、この話はツイッター上でも話題になり、あの手塚治虫が憑依することで有名な田中圭一先生も絶賛するほど。コレを観て泣かない人は最早人間ではない、お前の血は何色なのだと問いたい。
・野郎たちのツボを突く、ヴァイオレットの美しさ
今作の設定として、ヴァイオレットは誰もが振り向く美貌の持ち主というのがあります。実際のところ、ヴァイオレットというキャラクターはどこか西洋の人形のような雰囲気があり「かわいい」や「萌え」と言うよりも美しさを前面に押し出しているキャラクターだと言えます。金糸の髪に碧眼、礼儀正しくありながら十代というロリ要素まで兼ね備えておきながら「美」を表現している・・・今までにあまり無いパターンではないでしょうか。そんな難しい設定を見事再現した京都アニメーションは、さすがと言わざるをえないでしょう。さすが「前作Free!で貴腐人から得た利益をすべて注ぎ込んだ名作」とネットで噂されるだけのことはあります。
・自動手記人形とライター
さて、この記事を読んでくださっている方々は私が何の仕事をしているのかはお分かりかと思います。そう、ライターです。ライターもヴァイオレットのような自動手記人形と同じように文章で生計を立てています。
というか、実は結構彼女らと同じような仕事をした経験もあるのです。たとえば、スピーチ原稿の作成です。結婚式用のスピーチ等が多いですね。こういった依頼をする人と言うのは、決して「金を払って楽してやろう」と考えているわけではありません。・・・多分。私の経験から言うと、書きたいことが頭の中にありすぎて上手く文章にまとめることが出来ないという人が殆どでした。そういった依頼人から、まず1時間~2時間ほど何を伝えたいのか、あるいは対人関係などを訊いていきます。
中には「いやあ、その人のこと良く知らないんだけど・・・どうしてもって頼まれちゃってさぁ」という恐ろしい展開が待ち構えていることもあります。そんなときは、クライアントの周りに居る人からそれとなく情報を聞きだすことになります。そして苦労して集めた情報を要約し、文章にするのです。
文章にするといっても、言われたことをそのまま書いてはいけません。言われたことをそのまま書くと失礼な内容になってしまうことがあるからです。本編を観ていた人ならピンと来たはずです。そう、ヴァイオレットが作中でやっちまった失敗ですね。私もこの稼業をはじめたころは、同じような失敗をしてしまいクライアントから大目玉を食らいました。なのであのシーンには、すこし懐かしさを感じてしまいます。
・手紙って、書くことありますか?
ヴァイオレット・エヴァーガーデンは手紙も重要な要素のひとつです。作品の世界観としては、手紙は現役のコミュニケーションツールのようです。では、我々現実世界ではどうでしょう。人に何かを伝える時に、手紙を書くことなんてありますか?
私はもう、長いこと手紙なんて書いていません。メールやLINEが殆どです。しかし、それでも手紙の持つ性質は揺るぎません。作中でも「届かなくていい手紙なんてない」と語られるほど、手紙というものは重要視されています。手紙は、まず紙とペンを用意し、そして「あ~でもない、こうでもない」と長時間悩みに悩みぬいた結果生まれる努力の結晶です。それゆえに「思いがこもっている」と誰もが感じるのです。
ですので、日本では年賀状や暑中見舞いといった行事ごとにおいては手紙はいまだに現役で、それどころか電子メールなどの発展に伴い手紙の持つ特殊性が向上したともいえます。作品内の世界と現実世界における手紙の数はかなり差があるでしょうが、「手紙にある思い」という点が共通しているからこそ、視聴者は殆ど出す機会のない手紙にまつわる話であっても共感を覚えるのです。
・私の、初めての代筆
話は変わりますが私の始めての代筆は仕事としてではなく、高校生の頃にクラスメートから頼まれた「女の子に送るメール」の執筆でした。出だしだけ見ると作中のお話にあった「王女が隣国の王子と婚約を前提とした文通をし合う」のと似ていますが、あんなキレイな展開はありませんでした・・・。
どのようにやり取りをするのかというと、まず私がメールの文章をクラスメートに送り、そしてそのクラスメートが女の子に送るという非常に面倒くさいものです。しかし、人様の恋愛事情を生で覗き見できる機会なぞ、そうそう無いと思い依頼を承諾したのでした。ですが、イザやってみるとまったく気持ちがこもらないんですよね。
まずその女の子のことを私はそんなに可愛いと思っていませんでしたし、メールが長時間続くと相手から「もうええやろ、切り上げろや」という雰囲気がガンガン伝わってくる内容のメールがくるのですが、当のクラスメートはそれにまったく気づかないというバカさ加減。
そんな地獄とオサラバするために彼に告白を促し、結果的に見事撃沈し私の初めての代筆は幕を閉じたのでした。ヴァイオレット・エヴァーガーデンを観てふとそのことを思い出し、「もしあの時、俺が真面目に代筆のメールを打ち込んでいたらカップルが誕生したんやろか」と一瞬考えましたが、やはり非常にどうでもいいという結論に至りました。
まとめ:新作製作決定に沸くおっさんがここに・・・
ヴァイオレット・エヴァーガーデンが最終回を迎えたのと同時に、なんと新作の製作が決定したと画面にデカデカと映し出されたのです。原作が小説なので、新刊の発売なのかと思いきや、なんと監督である石立太一氏の所信表明まで公開されたわけですから、間違いなく「アニメでの新作」です。
それが今回と同じくテレビシリーズになるのか、はたまた劇場版やOVA作品になるのかは今のところ不明ではありますが、どうやらまた、おっさんが翌朝目を腫らすという気色の悪いシチュエーションが展開されるようです。
ヴァイオレット・エヴァーガーデンは、男女関係なく楽しめる作品なので、ぜひ一度ご覧になってみてください。
『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』公式サイト